家庭での課題
日常生活や人生設計の見直しが求められます。
徐々に介護が必要になる中期以降、
仕事や地域社会とのかかわりも大切です
自分や家族が認知症を発症したら、家庭生活への影響は小さくありません。さまざまな課題があることを理解して、備える必要があります。
一般的に、認知症の初期の段階では仮に1人暮らしをしていたとしてもそれほど不自由はなく、家事援助などのサービスを受けることで自立が可能です。しかし、中期に入ると、家事や身の回りのことの手順がわからなくなり、生活に支障をきたすことが少なくありません。徐々に介助が必要になり、さらに後期になると、かなり手厚い介護が必要になってきます。このため、症状が進行する前に、家族の中で介護の役割を決めておくことが大切です。かりに症状が進んで、家族内での介護が難しいと判断されたら、施設への入所を検討する必要もあります。
日常生活や今後の人生設計を見直すことも必要です。
たとえば、認知症を発症した本人が会社勤めをしていた場合、働き続けることが可能なのか、それとも休職、または退職するのかを、家族も一緒に話し合う必要もあるでしょう。
自営で商売をしている人なら、今後の経営を誰に任せるのかを決める必要も出てくるかもしれません。また、家族内で介護を担当する人も仕事を休んだり、勤務時間を変更したりする必要もあります。
地域社会とのかかわりも家族の中で考えておく必要があります。
認知症になると、夜中に大きな声を出したり、近所を徘徊したりすることも考えられます。認知症を発症していることを、家族が近所の人たちにあらかじめ話して、理解を求めることも必要となってきます。
日常生活や人生設計の見直しというと、大げさに思えるかもしれません。しかし、過度な悲観は禁物です。認知症が家庭内に及ぼす様々な影響を理解し、その人らしい生活を続けられるよう、日ごろから家族で話し合っておきましょう。
監修:新井平伊医師(アルツクリニック 東京院長)