アルツハイマー型認知症
20年以上かけて静かに進行
多彩な症状を発する認知症
認知症全体の7割近くを占める
アルツハイマー型認知症は、認知症全体の70%近くを占める一番患者数が多いタイプの認知症です。脳の神経細胞が減って脳が小さく委縮してしまうアルツハイマー病が原因で、症状が現れる20年以上前に病変ができ、極めて緩やかに進行します。
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβという老廃物が沈着し、これが脳の神経細胞を変性・死滅させて病変が作られていくと考えられています。加齢が一番の要因ですが、食事や運動といった生活習慣も発症や進行に深いかかわりがあるようです。
発症すると、同じ質問を何度もしたり、大事なものをどこにしまったかわからなくなったりする記憶障害が現れるようになります。さらに、簡単な計算ができなくなる計算力の低下、ものごとを段取りよく進めることができなくなる実行機能障害、日時や自分のいる場所などがわからなくなる見当識障害などの症状も現れます。
これらは認知症の本質的な症状で、「中核症状」と呼ばれます。この中核症状のせいで日常生活に支障をきたすようになると、今度はうつや幻覚・妄想、いらいら、興奮、徘徊といった症状が出る場合もあります。これらは、認知機能の低下による不安や戸惑いが要因となる症状で、「行動心理症状(BPSD)」と呼ばれます。
早期に治療を開始するほど
効果が出やすく持続する
アルツハイマー病は年齢が高くなるほど発症しやすくなる病気ですが、中には比較的若い年齢で発症することもあり、65歳未満で発症するケースを若年性アルツハイマー病と呼びます。50歳前後で発症する例が多いようです。遺伝的な要因や生活習慣の影響が大きいと考えられています。
アルツハイマー病やアルツハイマー型認知症には残念ながら現在のところ、失った脳の機能を回復する治療薬はありません。ただし、薬やリハビリなどによる適切な治療と生活習慣の改善によって、認知機能の低下を緩やかにすることは可能です。また、初期の段階で発見することも可能で、早期に治療を開始するほど薬の効果が出やすく、持続することがわかっています。
アルツハイマー型認知症発症のメカニズム
アルツハイマー型認知症はアミロイドβ(Aβ)という⽼廃物が脳内に蓄積し、神経細胞を破壊することで発症するといわれています。
監修:新井平伊医師(アルツクリニック 東京院長)