脳にゴミをためない習慣(2)脳のゴミを出す脳循環アップ
2020年07月07日
1.思考と行動の抑制「面倒くさい」
2.脳のゴミを出す脳循環アップ
3.予防に勝る治療なし
脳循環は30歳前後に低下し始める
脳が必要とする物質の補給は脳循環により行われています。しかし、脳血流、酸素代謝率、ブドウ糖代謝率の低下は早くから始まるもので、20歳後半から30歳前半になると低下の一途をたどります。脳循環が低下すれば、いかに優秀な脳でも衰え始め、認知症に向かって進みます。
認知症になりやすい基礎疾患は「糖尿病」「高血圧」「脳血管障害」「心臓疾患」です。これらはすべて、血管・血流に悪影響をもたらす疾患です。血管・血流に悪影響をもたらし、脳循環が低下すると、脳が栄養失調の状態になります。そして認知症につながるのです。
全身の血液循環は毛細血管が担っている
血管の種類は、動脈、静脈、毛細血管の3つに分類されます。それぞれの断面積の総和は「1:2:600~800」で、圧倒的に毛細血管が多いことが分かります。髪の毛よりも細い毛細血管が、全身の臓器や器官、脳の組織に入って酸素や栄養分が運ばれ、老廃物を取り出しています。
脳のゴミは睡眠中に押し流される
脳内の細胞には神経細胞とグリア細胞があります。グリア細胞とは、神経細胞の栄養補給などの役割を担っている細胞です。脳内は神経細胞とグリア細胞と血管で満杯状態ですが、ここで毛細血管は押しつぶされながらも栄養の供給と老廃物の回収をしています。
いつもは満杯状態の脳内ですが、驚くことに、睡眠中にグリア細胞は縮みます。グリア細胞が縮めば隙間ができます。その結果、脳神経細胞の周囲には大きな隙間ができます。毛細血管の血流は、この隙間を伝って脳の細部に入り込み、アミロイドβを押し流してくれるのです。
良質な睡眠のコツ
良質な睡眠を得る方法は多くの研究者や学者が研究していますが、それらをまとめると「定刻起床」に行き着きます。
生活リズムには自律神経が深く関係します。昼間の活動期には緊張の交感神経が優位になり、夜間の睡眠時は休息の副交感神経が優位になります。そして生活リズムが整うと心身の活動度が高まります。定刻起床を続けると、必然的に良質な睡眠が生まれてきます。
また睡眠時間は6~7時間が理想的だと言われています。ゴミがたまる前の40~50歳の時期には、特に良質な睡眠が必要です。認知症の芽をつむために、たまりかけたアミロイドβを消し去る環境を整えましょう。
毛細血管が加齢などによって消えていく!ゴースト血管の悲劇
加齢などによって血管構造が破綻し、血管の途中で血液成分が漏れ出すことがあります。この状態が続くと毛細血管自体が劣化し、最終的には消滅してしまいます。これでは血液が末端まで届かず、脳も栄養失調になり認知症につながります。アルツハイマー型認知症になると、健常者よりも毛細血管の数が30%少ないそうです。
血管が消滅する現象(ゴースト血管)の悲劇はこれだけにとどまらず、美容にも負の要因をもたらします。50代以降の顔の毛細血管の数は10~40代に比べて40%減少します。例えば、目じりの毛細血管は70代ならば30代の50%にまで減少します。そのため、シワやたるみが発生します。
毛細血管を消滅させないための習慣
ゴースト血管の発生は、加齢と生活習慣の乱れが大きな原因です。対策が取れるのは生活習慣の改善で、具体的には運動不足の解消、糖分や脂肪分の過剰摂取解消、ストレスをためない、紫外線を過剰に浴びない、良質な睡眠の確保です。
40歳頃は多忙のためか睡眠時間が短くなりがちです。睡眠時間が少ないと、睡眠中の毛細血管修復作業が追いつきません。30歳後半からは脳循環機能の低下が始まり、40歳を過ぎると血管に支障をもたらす生活習慣病の危険が出てくるので、若さをキープするためにも、毛細血管を傷つける生活習慣には気を付けましょう。
脳も体もよみがえる深呼吸
脳は酸欠に非常に弱い器官です。脳神経細胞は酸素補給が途絶えると、20秒で酸欠になってしまうほどです。逆に豊富な酸素があれば、かなりくたびれた脳でも蘇ります。
細胞も酸素を取り入れ、二酸化炭素を放出しますが、これは肺呼吸のように気体が移動するのではなく、血液中に溶けた状態で移動します。脳への酸素や栄養の供給は血液で行われます。酸素を脳細胞にまで届けるには、深呼吸が驚くほど役立ちます。
吐く息を、吸う息の2倍、3倍もの時間をかけてゆっくりゆっくり吐き出します。この時、唇は口笛を吹くような形にして息を吐きます。
深呼吸を数回繰り返すと、血管が広がり、大量の酸素が補給されます。脳細胞へも酸素が供給され、正常な判断力や記憶力、思考力が戻ります。
この時に良い姿勢で行うと、胸郭が自動的に広がり、より多くの酸素を取り込むことができます。
生活習慣の見直しは、毛細血管を消滅させないためにも必要なことだったのですね。これがシワやたるみ予防にもつながるとなると、40歳でも他人ごとではありません。
生活習慣の見直し、良質な睡眠、深呼吸でいつまでも若さを維持させたいものです。
引用書籍紹介:
- 「物忘れをこれ以上増やしたくない人が読む本」医学博士 松原栄多