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認知症予防コラム

脳にゴミをためない習慣(3)予防に勝る治療なし

2020年07月07日


 1.思考と行動の抑制「面倒くさい」
 2.脳のゴミを出す脳循環アップ
 3.予防に勝る治療なし


認知症には確立された治療方法がありません。治療ができないとなれば、防いでいくことになります。「認知症予防」とあちらこちらで言われるのはそのためです。
認知症になる前がMCI、その前の段階というと、まだ何の自覚症状もない時期です。脳のゴミの被害を受けていない時期に予防に取り組むことは、相手が見えないため、非常にやりにくいと感じるかもしれません。しかしここが重要なポイントです。見えない相手は最弱の状態です。最弱の時であれば克服も容易です。 MCIよりも前の無症状の段階であれば、予防方法も「気をつける」だけで効果があります

予防は生活習慣病の管理だけ

アルツハイマー型認知症は脳にゴミがたまることで始まります。このゴミは神経細胞を死滅させてしまいます。死んでしまった神経細胞は生き返りません。だから認知症は治りにくいのです。しかしこのゴミは、脳循環で簡単に押し流すことができます。つまり、脳循環さえ良ければゴミがたまりにくく、たまっても押し流されるのです。
良好な脳循環には良好な毛細血管が不可欠です。よって、高血圧や動脈硬化、糖尿病の徴候がないかどうか、健康診断の数値を気にして確認してください。検査値を正常内にし、健常者と同じ健康度を保っていれば問題ありません。 発症までに20~30年の余裕があるのが認知症です。この時間を最大限に活用し、生活習慣病管理を行ってください。40歳を過ぎたら生活習慣病の管理です。この時期から始める生活習慣病の管理が、最良の認知症予防策です。毛細血管が健康な状態で、脳循環さえ行われていれば、ゴミは押し流せます。これを忘れないでください。

いつでも好きなときに、軽く毛細血管を鍛える

毛細血管は髪の毛よりも細く、100本並べてようやく1ミリになる細さです。とても細いのでその強化は容易ではなく、ハードな運動によって強い力がかかればすぐにも破れるかゴースト化します。そこで、効果的で持続可能な方法をご紹介します。

『毛細血管を増やすには、運動で血流を上げることが重要。5分くらいの軽い筋トレと、15分のウォーキングが効果的です。』
人間の血管をつなぎ合わせると地球を2周半するほどの長さになります。この長さの血管に、休むことも許されず、握りこぶし大の心臓が絶えず血液を送り続けるのでは不足が生じるでしょう。しかしこれを筋肉が援助できるのです。筋肉が動いて、筋肉内の血管をしごき、心臓のポンプ作用と筋肉のしごきによって血液は全身を巡ります。
どこの筋肉が効果的かというと、一番大きな太ももの筋肉です。大きな筋肉には多数の血管が入り込んでいます。

15分のウォーキングが難しい方は、次の方法をご紹介します。

『簡単スクワット・かかと上げ下ろし・もも上げ足踏み』を可能な時間帯で、可能な限り多く実施してください。こんなに簡単な運動で効果があるのか、と疑われる方もいるでしょう。毛細血管を鍛えるには負荷は不要です。何もしなければ毛細血管の機能は低下し、血液循環も弱まります。駅で電車を待っているとき、会社でプリンターの前に立っているとき、エレベーターを待っているとき、いつでも実行できますので、継続して実施してください。

簡単スクワット

背筋を伸ばしたまま膝の屈伸運動をします。足は開くほどにつらくなるので閉じていても良い。何かにつかまっても構いません。(10回)
※膝痛がある人は、痛みが出ない程度に曲げてください。

かかと上げ下ろし

自然体で直立し、体重を軽くつま先にかけます。この基本の立ち方で、かかとの上げ下ろしを繰り返します。(10回)

もも上げ足踏み

足踏みのポイントは、ももを地面と平行になるまで上げることです。つま先の向きは平行・垂直、どちらでもかまいません。(20~30回)

若返りホルモン・マイオカインを出す筋トレ

マイオカインとは筋肉で作られる物質で、若返りホルモンと呼ばれています。マイオカインの効果は次の通りです。

  • 筋力や骨力の向上
  • 抗炎症性の向上
  • 脂肪細胞での脂肪分解
  • 血糖代謝、認知機能、動脈硬化の改善
  • 免疫力アップ
  • 美肌効果

下半身の筋肉、特に太ももやふくらはぎの筋肉から分泌されやすいと言われています。紹介した毛細血管を鍛えるトレーニングは、認知症予防だけでなく、数々のメリットにつながりますので、継続的に実施して効果を実感してみましょう。

引用書籍紹介:

  • 「物忘れをこれ以上増やしたくない人が読む本」医学博士 松原栄多