脳にゴミをためない習慣(1)思考と行動の抑制「面倒くさい」
2020年07月07日
1.思考と行動の抑制「面倒くさい」
2.脳のゴミを出す脳循環アップ
3.予防に勝る治療なし
40歳を過ぎると「面倒くさい」と感じることが多くなります。この「面倒くさい」が、実は「認知症を近づけている」と言われると、ドキッとしませんか。
年を重ねると意識はラクな方へと流れます。例えば、「鍵はどこに置いたの?」と聞かれたときに、過去の記憶をたどって鍵を置いた場所を思い出すことが煩わしくなり、「忘れた」と切り捨てたくなります。切り捨てれば、これ以上時間を取られず、この問題からも解放されて、記憶をたどる面倒がなくなるからです。
しかし、この「面倒くさい」つまり意欲の低下が、すべての思考と行動を抑制してしまいます。思考と行動の抑制が続くと知的活動が低下し、記憶力の低下が起こって、認知症が迫ってくることにつながります。
「面倒くさい」と感じ始めたときが、予防を始めるタイミング
認知症は、ごく初期の軽症であっても、かかってしまえば疾患です。疾患になると予防でなく治療の段階になります。現在のところ認知症には確立された治療法はなく、進行を遅らせるのがせいぜいです。治療法がないのであれば、予防をするしかありません。その予防にも効果的な成果を出すには始めるタイミングがあります。 「認知症を発症する前」です。認知症の中で一番多いアルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドベータというゴミが溜まることで発症します。ただ幸いなことにゴミが溜まり始めてから発症するまでには20~30年ほどかかります。つまり20~30年の余裕があり、この間に予防できれば認知症のない余生を送ることができるのです。
思い出す努力で「面倒くさい」を克服
記憶力の低下は最初に自覚する老化現象の一つでしょう。年齢とともに「名前が思い出せない」ことが増える実感があるかと思います。認知症の最大の原因は加齢です。記憶の低下は加齢のサインであり、認知症につながる道だと受け止めて向き合わなければなりません。年相応の老化だから仕方がないと片付けず、その度に思い出す努力が大切です。
思い出す努力を重ねることで、「面倒くさい」の克服につながり、思考と行動の幅が広がってきます。意欲の低下(=「面倒くさい」)は、認知症の症状の一つですが、多くの人は自分の身に起こった時に認知症の徴候であると気が付きません。「面倒くさい」と感じたら、その時に打ち消す努力が認知症予防につながります。
「面倒くさい」という意欲低下の悪影響
- 「面倒くさい」から記憶しない(記憶力低下)
- 「面倒くさい」から考えない(思考力低下、遂行能力低下、見当識低下)
- 「面倒くさい」から運動しない(生活習慣病につながる)
- 「面倒くさい」から外出や人付き合いをしない(孤独が短命と認知症を引き起こす)
- 「面倒くさい」から食事をとらない(栄養状態悪化)
- 「面倒くさい」が増えるとうつ傾向になる(うつ病はアミロイドβの蓄積が多くなる)
意欲低下を改善する「欲」
「面倒くさい」という意欲低下は、脳細胞の障害によって意識・活力・欲求・行動など、生きるための活動が低下したことが原因だと言われています。
意欲の欲は欲求の欲です。欲が強い意志を生み、「面倒くさい」が消えるのです。欲求があれば、脳のスイッチが入り、脳は欲を満たすために動き出します。
やる気を出させる特効薬はご褒美
欲はなくとも行動を起こさなくてはならない場合、報酬によって行動を起こさせる方法があります。人は、ご褒美をもらったり、褒められたり、認められたりすることで「面倒くさい」を封じ込めることができます。
自分に対してご褒美を設定するのも良いですし、「面倒くさい」が多発する家族に対しては誉め言葉が妙薬になります。「こうこうだから、頑張って」と説得するよりも「アナタは偉い、素晴らしい」の誉め言葉の方が効果的です。
好きなことは上手くいく
脳は好きなことや楽しいと思えることには「面倒くさい」と感じません。脳の多くの部分が作用し、実行しようと動き出します。知恵や記憶、やる気や欲を司る脳の協力を得てスムーズに行動に移ります。
「面倒くさい」の悪影響によって認知症へ近づく前に、打ち消す工夫をして「面倒くさい」を克服し、思考と行動の幅を広げる習慣(クセ)を身に付けましょう。
次の章では脳のゴミを排出する脳循環の機能を高める習慣をご紹介します。
引用書籍紹介:
- 「物忘れをこれ以上増やしたくない人が読む本」医学博士 松原栄多