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認知症予防コラム

40歳からの認知症予防(第2話)生活習慣の改善

2020年09月21日

第1話.40歳が良いタイミング
第2話.生活習慣の改善   
第3話.運動の習慣づくり  
第4話.精神的安定     
第5話.趣味、社会的交流  

認知症予防策の3つの柱

認知症予防は40歳から意識して取り組み始めることで、65歳を過ぎた時に大きな差が出ます。高齢者向けに提言されている予防法と基本的には変わりませんが、大きく3つに分類して、予防方法をお伝えしていきます。

  1. 生活習慣の改善 ~食事・睡眠・嗜好品・生活習慣病の改善~
  2. 運動の習慣づくり
  3. 趣味・社会的交流 ~新しいことを学ぶ知的好奇心~

1.生活習慣の改善

食事、睡眠、嗜好品の見直しと、生活習慣病の治療に焦点を当ててお話しします。

【食事】

久山町の認知症予防食

1988年から15年以上にわたって1,000人以上の住民を調査・観察した福岡県久山町の研究で、食生活の傾向と認知症発症率が明らかになりました。認知症発症率が低かった方が多く摂っていた食品を「認知症予防食」として紹介します。

「認知症予防食」
 ・魚介類(特にイワシやサンマ、アジなど。貝類も含まれる)
 ・野菜、海藻類(緑黄色野菜、ナス、トマトなど。わかめ、昆布、めかぶ、もずくなど。)
 ・植物性油(オリーブオイル、ごま油など)
 ・飲料(緑茶や紅茶)
 ・大豆製品(豆料理、納豆、豆腐)
 ・その他(乳製品、芋類、果物類など)

これらを多く摂っていた人は、そうでない人と比較すると、認知症発症率が30%以上も低いことが分かりました。

地中海料理

葉物野菜、全粒穀物、果実、魚、オリーブオイル、ナッツ、赤ワインなどで構成される食事が認知力低下の予防だけでなく、高齢期の認知力改善にも役立つという報告が注目されています。

その他

飲料では緑茶の他にコーヒーの効用も注目を集めています。栄養成分からみる抗認知症効果を示すものは、DHA・EPA・ポリフェノールがあげられます。

【睡眠】

アミロイドβは眠っている間に脳の外へ排泄されます。睡眠によってアミロイドβは減少しますが、徹夜をするとその分溜まってしまいます。眠らなかった時間の3~4倍ほどしっかり眠らないと元に戻らないため、一晩徹夜した場合は3~4日間しっかり眠ることを心がけてください。

【嗜好品】

喫煙

久山町の研究により、中年期以降の喫煙は認知症発症のリスクが有意に関連することが分かりました。中年期に喫煙していても高齢期にやめた人は、リスクの増加は見られませんでした。また、喫煙者の大脳皮質が薄くなっていたり、脳の前の部分が薄くなっているという報告もあります。しかしこれも禁煙によって元に戻るという研究もあります。いつの時点からでも遅くはありません、早く禁煙するほど健康で過ごせる時間が長くなります。ぜひ禁煙しましょう。

飲酒

アルコールの脳への影響も報告されており、飲酒量が増えるほど脳が萎縮するということです。大量の飲酒は認知症の原因となりますが、全く飲まないよりも少量ないし中等量の飲酒は、認知症の危険性には関係なく、予防効果があることが示唆されています。

【生活習慣病の改善】

高血圧や糖尿病の治療は高齢期になってからでは効果が薄く、40~65歳までの健康管理がきわめて重要であることが明らかになっています。

高血圧の治療

数年~十数年という長い期間にわたって高血圧が続くと、脳の動脈が硬化して弾力性を失い、切れたり詰まったりしやすくなるために、脳梗塞や脳出血が起こりやすくなります。前頭葉や頭頂葉など、精神的な活動をつかさどる部分に脳卒中が起こると認知症になります。高血圧を治療すれば、脳卒中が起きる確率は劇的に減少し、血管性認知症のリスクが減少します。治療方法は、塩分制限、降圧剤の服用、肥満の改善、適度な運動です。

糖尿病の治療

摂取した糖質により血糖値が上昇して高血糖の状態になるため、それを抑えようとしてインスリンが分泌されます。役割を終えたインスリンを分解する「インスリン分解酵素」は、アミロイドβを分解して脳の外へ排泄する役割も担っています。ところが糖尿病になると、「インスリン分解酵素」は増えたインスリンの分解に忙しく、アミロイドβの分解にまで手が回りません。そのため、アミロイドβが溜まってしまいます。治療方法は、摂取カロリー制限、運動療法です。

高血圧も糖尿病も、食事の見直しと運動によって改善しますので、生活習慣病の改善が認知症予防に直結していることが良くわかります。

参考: