認知症予防習慣 ―食習慣―
2021年01月18日
健康的なバランスの取れた食事を
2019年にWHOが発表した「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」の中に、栄養への対策の記述があります。WHOで推奨している対策は、食文化の異なる日本では実現が難しいため、厚生労働省が内容の検討と邦訳をしています。今回はこれに沿って、日本人に合った食の認知症予防習慣をご紹介します。
WHOガイドラインの栄養に関する推奨内容
推奨1:
地中海食は、健康またはMCIの方に対して認知機能低下や認知症のリスクを低減させる。
推奨2:
健康的なバランスのとれた食事は全ての方に推奨される。
推奨3:
認知機能低下や認知症のリスクを軽減する目的では、ビタミンB、E、多価不飽和脂肪、複合サプリメントは推奨されない。
健康的な食事の内容: • 果物、野菜、豆類、ナッツ、全粒穀物(未加工のトウモロコシ、キビ、オート麦、小麦、玄米など)の摂取。 • 1 日あたり最低400 gの果物と野菜。(ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、その他のでんぷん質の根菜は果物や野菜に分類されない) • 1 日あたり約2,000 キロカロリーを摂取する健康体重の人の場合、総エネルギー摂取量のうち遊離糖類の摂取量は5%未満であること。(遊離糖類とは、ブドウ糖、果糖、しょ糖、食卓砂糖等の、食品や飲料に添加されている、蜂蜜、シロップ、果汁、濃縮果汁に天然に存在するものをいう) • 総エネルギー摂取量のうち、脂肪からのエネルギー摂取量は30%未満であること。不飽和脂肪酸が望ましく、飽和脂肪酸の摂取量は総エネルギー摂取量の10%未満に、トランス脂肪酸は総エネルギー摂取量の1%未満に抑えることが推奨される。特に、工業的に生産されたトランス脂肪酸は避ける必要がある。 ○不飽和脂肪酸…魚、アボカド、ナッツ、ヒマワリ、キャノーラ、オリーブオイル ○飽和脂肪酸…脂肪の多い肉、バター、ヤシ、ココナッツオイル、クリーム、チーズ、ギー、ラード ○トランス脂肪酸…加工食品、ファストフード、スナック食品、揚げ物、冷凍ピザ、パイ、クッキー、ビスケット、ウエハース、マーガリン、スプレッド、肉・乳製品に含まれる牛、羊、山羊、ラクダのような反芻動物由来のトランス脂肪酸 • 食塩は1 日あたり5g未満であること。 |
* 地中海食 とは、イタリア料理、スペイン料理、ギリシア料理など地中海沿岸諸国の食習慣で、以下のような特徴があります。
・ 果物や野菜を豊富に使用する
・ 乳製品や肉よりも魚を多く使う
・ オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う
・ 食事と一緒に適量の赤ワインを飲む
厚生労働省の日本人向け解説
食文化が大きく異なる日本に地中海食を持ち込むことは容易ではありません。そこで厚労省では、1988年から17年間高齢住民の追跡調査をした福岡県久山町の研究報告を紹介しています。この研究では、認知症を発症しにくい食事パターンが明らかにされています。
摂取するとよい食品
大豆・大豆製品
緑黄色野菜
淡色野菜
海藻類
牛乳・乳製品
果物・果物ジュース
芋類
魚
卵
控えるとよい食品
米、酒
主食(米) に偏らず、主菜や副菜をしっかりとるバランスの良い食事が、認知症の発症リスク軽減につながります。積極的に多くの食品を摂取できるように心がけましょう。季節の食材を取り入れて献立を考えると、楽しい食習慣につながりそうですね。
MCIスクリーニング検査では、栄養状態を知ることができます。血液中のタンパク質の量を測定することで、身体の状態を数値で確認することができます。数値の低下が気になる方は、バランスの良い食事を心がけて、栄養状態を良くしましょう。
参考文献:
- 出典:WHO「認知機能低下および認知症のリスク低減(Risk Reduction of Cognitive Decline and Dementia)のためのガイドライン」
- 日本語版「認知機能低下および認知症のリスク低減WHOガイドライン」(令和元年度 厚生労働省老人保健健康増進等事業「海外認知症予防ガイドラインの整理に関する調査研究事業」・WHO ガイドライン『認知機能低下および認知症のリスク低減』邦訳検討委員会)