家族が元気なうちにやっておきたい準備(お金編)
2020年09月04日
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もし家族が認知症になったらどうなるのでしょう
認知症になるといままで当たり前にできていた身の回りのことができなくなる、金銭管理もできない、家族など誰かを頼らざるを得なくなるといわれています。症状がでてくると、通院や入院、介護施設への入居など、様々な費用も発生します。本人の治療費ですから本人のお金で払うことが一番です。ですが、一般的に金融機関は預金者本人の意思確認のもと預金の引き出しを行います。家族なら簡単に口座から入出金ができると思ってしまいますが、「本人確認」の審査が厳しく、家族でも入出金できないことが多々あります。
2020年3月に全国銀行協会は各銀行に対して認知症患者の預金を家族が引き出しやすくなるよう通達を出しましたが、入院や介護施設の費用など預金の引き出しには明確な理由が必要で、かつ継続的に預金の引き出しが必要な場合は成年後見制度の利用が必要になります。また、本人名義の不動産の修繕や処分もできなくなります。
相続については、相続人のひとりが認知症だった場合、遺産をどのように分けるか決める分割協議ができず、話し合いがストップしてしまいます。協議には参加者全員が出席し話し合い、合意のうえで分割を進める必要があるからです。 これらのことを考えると少しでも早く、家族が認知症になった場合の準備をしておきたいところですよね。今回は家族が元気なうちにやっておきたい「認知症への準備(お金編)」をご紹介いたします。
やっておきたい5つの準備
親もしくは家族のだれかのことで「もしかして認知症?」と感じたら本人となるべく早く対策を相談し、次の5つについて行動していくことをおすすめします。
1. 定期預金は解約しておこう
定期預金は銀行の窓口で手続きが必要な場合はほとんどです。本人に判断する能力があるうちに解約をして普通預金にしておくことが大事だといわれています。認知症の症状が進行した場合でも、家族が必要な資金をキャッシュカードで引き出すことができます。実は認知症の家族がいる方の悩み第一位が「定期預金の解約」なのです。「あれ?」と少しでも思ったら解約をしておいたほうが無難です。 強引にすすめるとお互いに良い気持ちはしないでしょうから、早めに前向きに話あっていくことをおすすめします。
2. 通帳とキャッカードの保管場所と暗証番号の確認しておこう
銀行の通帳やキャッシュカードの保管場所を確認し、暗証番号まで確認しておくことをおすすめします。本人が認知症になってからでは保管場所や暗証番号を忘れてしまっているケースが多く、これらを探すのは大変な作業になります。
3. 代理人カードをつくろう
銀行では「本人と生計を同一にする親族」に限って、口座を持っている本人のキャッシュカード以外に代理人カードが1〜2枚作れます。「代理人カード」があれば口座のお金をすべて共有できるので信頼できる人物を選任することが大切だといわれています。
申請は本人が行います。カード作成の手数料や1日あたりの制限などは銀行により異なっているようですので、事前に調べておくことをおすすめします。
4. 医療保険・生命保険の受取人を確認しておこう
親の生命保険を確認しましょう。特に死亡保障の受取人が認知症になった場合、請求することができず受け取れなくなる場合があるといわれています。契約内容を確認し、代わりに請求ができる特約の代理請求人を決めておくことをおすすめします。
5. 行動の前に相談窓口で情報収集をしておこう
家族が認知症になったら利用できる制度は多岐にわたります。まずは情報収集をしておくこともひとつです。身近な窓口としてはまず「地域包括センター」で、全国各市区町村に4000か所以上設置されています。また「成年後見制度センター」や「成年後見利用支援センター」といった名前の「成年後見制度推進機関」も都道府県・各市区町村におかれています。ここでは成年後見制度がどのような制度なのか、申し立て手続きの方法などを詳しく説明してもらえます。
いかがでしたでしょうか。「認知症とお金」については、ナーバスな分、家族でも話し合いがしにくいテーマですよね。ですが、なにも準備をしておかないといざとういときに大変です。本人の判断能力がしっかりしているうちに話し合いをしておきましょう。
出典:
「暮らしとおかね Vol.7 親が認知症と思ったら できる できない 相続」株式会社ビジネス教育出版社