病院で受けられる検査の種類
問診や検査でMCIを見つけることができます
診察ではどんな検査をするの?
「もの忘れ外来」の診察では、主に医師による問診で診断が行われます。まずは ”認知症でない” ことを調べるために、診断の補助として以下のような検査をすることがあります。
医師の問診や診断補助の検査によって、MCIの診断基準に則り診断されます。
問診形式の検査で、一時的に単語を覚えたり、図形を模写したり、動物の名前を答えさせたりしてMCIの可能性を判断できる「日本語版 Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)」があります。単語を覚えて後から思い出してもらう遅延再生を調べたり、現在の年齢や自分が今いる場所、簡単な引き算などの質問に答えてもらい、その回答内容によって認知機能の低下度を判定するものです。
「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」、「Mini-Mental State Examination(MMSE)」もあります。どちらかというとHDS-RやMMSEは認知症の検査ですが、いずれも遅延再生などによってMCIの気付きに役立つこともあります。
他に、「ウェクスラー式知能検査(WMS-R)」と呼ばれる、国際的に使われている知能検査でもMCIに気付くことができます。
日本語版 Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J) |
ものごとを計画し、順序だてて実行する遂行機能を調べたり、図形を模写したり、動物の名前を答えさせたりする簡単なテストで、MCIの検査として開発されました。 |
改定 長谷川式認知症簡易評価スケール (HDS-R) | 国内でよく使われている簡易な認知機能テスト。簡単な質問に答え、その回答内容によって認知機能の低下度を判断します。 |
Mini-Mental State Examination (MMSE) | 長谷川式と同様に簡単な質問に答え、認知機能を評価する国際的に使用されている検査です。長谷川式よりも質問項目が少し多いです。 |
ウェクスラー式記憶検査 Wecheler Memory Scale-Reviced (WMS-R) | 言語や図形などを使った問題で、記憶のさまざまな面を評価するテスト形式の検査です。国際的に最もよく利用されている総合的な記憶検査。 |
「一般血液検査」でわかる、ビタミンB12 や葉酸の欠乏で認知機能が低下することがありますが、これらは栄養を補充することで改善されるため、アルツハイマー型認知症やMCIとは区別されます。「MCIスクリーニング検査」は、少量の血液を採取し、3つのタンパク質の量を調べることでMCIのリスクを知ることができます。
「APOE(アポイー)遺伝子検査」では、アルツハイマー型認知症の発症にかかわるAPOE遺伝子型を調べることで、遺伝的な要因によるアルツハイマー型認知症の発症リスクがわかります。
一般血液検査 | ビタミンB12や葉酸の欠乏による認知機能低下ではないか、また、その他の病気の有無を調べるための通常の血液検査です。 |
MCIスクリーニング検査 | アルツハイマー型認知症の原因物質の排出されやすさを見る、MCIのリスクを調べる血液検査です。 |
APOE遺伝子検査 | アルツハイマー型認知症の発症のしやすさに関連する遺伝子型を調べる血液検査です。遺伝子型は生涯変化しないため、一度受ければ良い検査です。 |
MRI・CTなどの脳画像検査で脳の萎縮を確認する方法もあります。認知症は海馬の萎縮が特徴的です。老化とともに脳全体の萎縮が認められますが、記憶障害の程度とは必ずしも一致しません。
画像検査 | MRI(磁気共鳴画像診断装置)やCT(コンピュータ断層撮影)で脳の状態を画像で確認します。 |
MCI(軽度認知障害)の定義
MCIの診断基準は、国際的に定められています。
- 本人や家族から認知機能低下の訴えがある、または医師による認知機能低下の懸念、および神経心理検査などで認知機能の低下が示される。
- 基本的な日常生活をおくることに支障はないが、昔と比べて努力や工夫が必要になった。
- 認知症ではないけれど、正常な状態でもない。認知機能の低下が他の疾患でうまく説明できない。
DSM-5 :精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版 米国精神神経学会 日本語版監修 日本精神神経学会 2014
監修:朝田隆先生(東京医科歯科大学特任教授、メモリークリニックお茶の水院長)