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予防のためにできること

すぐにできることから取り組みましょう。

認知症予防のために
チェックしてみよう

「最近、物忘れがひどくなった気がする」
「まだ、兆候はないけど、少しでも将来のリスクを小さくしたい」

自分や自分の家族にこんな不安がある人は思い立った時が吉日。今すぐにでもできることから始めたいものです。
認知症は、加齢や遺伝的な要因など本人の努力ではどうにもならない要素もあります。しかし、一方で毎日の生活習慣がその発症や進行に大きく関与していることもわかっています。

今、何をするべきか。以下のチェックリストと解説にしたがって、あなたやあなたの家族が取り組むべきポイントを整理してみましょう。

  • 糖尿病である、または糖尿病の疑いがある
  • 高血圧である、または高血圧の疑いがある
  • 脂質異常症である、またはその疑いがある

血糖値が高すぎる状態が続く糖尿病は、放置すれば血管を傷めやすくしてしまいます。血管性認知症につながりやすいのはもとより、アルツハイマー病のリスクも高くなり、さらにはアルツハイマー病と血管性認知症が合併して脳の障害がさらに進む恐れもあるのです。
また、血糖値が下がり過ぎる「低血糖」も認知機能の低下につながる可能性があり、良好な血糖値を維持することは重要です。生活習慣の改善だけで血糖値がコントロールできない場合は医師の指示に従い、薬物療法を行うことも必要となってきます。
一方、中年期に高血圧を放置していることも、高齢になってから認知症の発症リスクを高める原因です。高齢者の場合は血圧の下がり過ぎも認知機能の低下につながる恐れがあり、正常な血圧を維持する必要があります。
日本高血圧学会では75歳未満の降圧目標値を130/80mmHg未満(家庭で測定する場合は125/75mmHg未満)、75歳以上の降圧目標値を140/90mmHg未満(家庭で測定する場合は135/85mmHg未満)、(「高血圧治療ガイドライン2019」)と定めています。この範囲になるようにコントロールしましょう。
このほか、脂質異常症、中でもコレステロール値が高い人もアルツハイマー型認知症になりやすいことがわかっています。生活習慣の改善を基本に、必要に応じて薬物療法も行い、血中脂質を適正に保つ必要があります。
いずれも健康診断などで異常を指摘されたら、内科医を受診することをおすすめします。

  • 耳が聞こえにくくなってきた

加齢の影響で耳が遠くなる加齢性難聴。「仕方がない」と諦めてしまいがちですが、聞こえの悪化は人付き合いの回避につながるなどして、認知機能の低下を促進する可能性があるといわれています。耳鼻咽喉科を受診してきちんと治療を受け、自分の聴力に応じた補聴器を選んでもらい、適切に使用しましょう。

  • 気分が落ち込む、うつの気がある

うつ病と認知症は別の病気で、うつ病による認知機能の低下は治療による回復が期待できますが、高齢者の場合、うつ病の治療をしても認知機能が回復せず、認知症に移行していく例がみられます。また、それとは逆にアルツハイマー病による認知機能の低下で不安や焦りが生じ、うつ状態に陥ることもあります。
早期に適切な治療を受けることが大切ですので、精神科や心療内科を受診してください。

  • 太り過ぎ、あるいはやせ過ぎである

中年期の肥満は認知症発症のリスクを高めます。いわゆる「中年太り」は食生活の見直しや運動をすることによって解消する必要があります。
一方で、高齢者の場合はやせ過ぎのほうが認知機能の低下を招くとの指摘もあり、やせ過ぎも避ける必要があります。

  • 人づきあいがほとんどなくなった

高齢になり、人との付き合いやつながりが減って孤立感が高まると、認知機能の低下を早めてしまう恐れがあります。仕事やボランティアなどの社会的な活動はできる限り続け、人付き合いも積極的に続けることが大切です。

  • お酒を毎日飲む

アルコールには神経を傷める作用があり、長期にわたって飲酒を続けていると、脳を委縮させるリスクがあります。一度に大量の飲酒をすることはもちろん、少量でも毎日、何十年にもわたって飲酒を続けている場合も要注意です。お酒を飲まない「休肝日」をなるだけ増やしていくことも大切です。

  • たばこを吸っている

喫煙はアルツハイマー型認知症に加え、血管性認知症のリスクも高めます。かつては少量の喫煙が認知症のリスクを下げるとされていたこともありますが、多くの研究の結果、現在ではこの説は否定されています。認知機能低下のリスクを下げるためにも喫煙している人は禁煙に取り組んでみましょう。

  • 運動をほとんどしない

適度な運動は認知機能の低下を予防する効果があることがわかっています。認知症の発症につながる生活習慣病予防・改善の観点からも運動は欠かせません。
エスカレーターやエレベータを使わず階段を上る、電車通勤の人は1駅手前で降りて歩くといった生活の中で運動する機会を増やし、ジョギングや速足のウォーキングといった汗ばむくらいの運動を1回30分、週3回程度を目標に取り組んでみましょう。
人とのつながりもできるスポーツジムの利用を検討するのもいいでしょう。

監修:新井平伊医師(アルツクリニック 東京院長)