カマンベールチーズを食べると認知症予防になる可能性
2024年12月25日
近年の研究により、カマンベールチーズには認知機能の維持や改善につながる可能性のある成分が含まれていることが明らかになりました。本記事では、カマンベールチーズと認知症予防の関係について、研究報告をもとに詳しく解説します。また、日々の食事に取り入れやすいレシピもご紹介しています。
目次
カマンベールチーズと認知症予防の関係
2024年8月22日の報告では、日本に住む65歳以上の高齢女性を対象にした調査において、カマンベールチーズを習慣的に摂取している人は、認知機能の低下が起こりにくいことが示されました1)。この報告により、カマンベールチーズが認知症予防につながる可能性があると注目されています。
カマンベールチーズを食べる人は認知機能の低下が起こりにくい
研究では自宅で生活する65歳以上の日本女性を対象としています。週1回以上チーズを食べている人はそうでない人に比べ、MMSE*1のスコアが高い結果が見られています。
特にチーズの中でもカマンベールチーズを週1回以上食べている人はほかのチーズを摂取している人に比べてMMSEのスコアが高い結果がみられています。
MMSE(Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)*1:全般的な認知機能の評価指標として国際的に最も活用頻度が高い認知機能検査
カマンベールチーズが認知機能に関わるBDNFを増加させる
カマンベールチーズの摂取によってBDNF(脳由来神経栄養因子)が増えることを示した研究結果があります。
軽度認知障害(MCI)のある日本の70歳以上の高齢女性において毎日カマンベールチーズ33.4g(2ピース)を3ヶ月間食べたグループではBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加したことが報告されました2)。
BDNFは脳内で神経細胞の発生・成長・維持・修復などを促すタンパク質です。記憶や学習に関係する脳の海馬にBDNFは多く出現することがわかっています。またアルツハイマー病の進行とともにBDNFの血中濃度は減少し、MMSEの値とBDNFの血中濃度は相関関係にあると報告されています3)。
これまでに、運動によってBDNFの増加が認められることが知られていますが4)、このように、カマンベールチーズを食べることでもBDNFが増加し、認知症予防になる可能性が示されました。
認知症予防が期待されるカマンベールチーズの特徴
チーズは乳から作られるナチュラルチーズとナチュラルチーズから作られるプロセスチーズに分けられます。
チーズの種類
ナチュラルチーズは牛やヤギなどの乳に乳酸菌や酵素を加えて作るチーズです。乳酸菌や酵素によって熟成が進むと風味や味が変化していき、乳の種類や作り方、作る地域によって多くの種類があります。
プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱して作るチーズです。加熱によって熟成は止まるので風味が安定して保存しやすい特徴があります。
カマンベールチーズの特徴と成分
カマンベールチーズは白カビをつけて熟成させるナチュラルチーズの一つです。表面は白カビで覆われており、熟成が進むと中身はやわらかくなります。
オレイン酸アミド
カマンベールチーズの成分であるオレイン酸アミドと呼ばれる脂質成分が認知機能の維持に有効であると報告されました5)。50~75歳の認知症と診断されていない男女において、オレイン酸アミドを摂取したグループと摂取しないグループとの比較で以下の結果がみられています。
- BDNFが維持される
- 認知機能検査において短期記憶およびワーキングメモリ―のスコアが高い
- 主観的な睡眠の質や入眠時間が改善
WYジペプチド
カマンベールチーズに含まれる2種類のアミノ酸(トリプトファン、チロシン)からなるジペプチドであるWYジペプチドの摂取によって、加齢に伴って低下する海馬のニューロン活動や認知機能の改善が動物実験により示されました6)。この研究ではアルツハイマー病のモデルマウスに発症前からWYジペプチドを摂取させることで、大脳におけるアミロイドβ沈着の抑制傾向がみられ、認知機能の低下が改善することが報告されています。これにより、WYジペプチドの摂取によるアルツハイマー病を予防効果が期待されています。
認知症予防が期待できるカマンベールチーズのレシピ
カマンベールチーズはスーパーやコンビニエンスストアでも手に入ります。円形で丸ごと販売されている商品が多いですが、あらかじめ6ピースにカットされている製品もあります。
カマンベールチーズの外側を覆う皮のような部分が白カビです。白カビ部分もそのまま食べられます。カビ部分の独特のほろ苦さと中身のクリーミーさの風味や食感のバランスが味わい深いチーズです。そのまま食べるほかにも次のようなレシピも楽しめます。
- カットして生野菜や温野菜のサラダに加える
- 丸ごと火を入れてフォンデュやアヒージョにする
- カットしてピザやクラッカーにのせる
- フライやてんぷらにする
- ハンバーグの上にのせる
- グラタンに入れる
- 野菜やキノコなどと一緒にソテーする
- はちみつをかけてスイーツ風にする など
カマンベールチーズは適量を楽しみましょう
カマンベールチーズには、認知機能を守り改善する可能性があるオレイン酸アミドやWYジペプチドが含まれています。普段の食事に取り入れることで、認知機能の維持や認知症の予防に役立つかもしれません。
また、そのまま食べることはもちろん、サラダ、ソテー、アヒージョ、グラタンなどのさまざまな料理でも楽しめます。研究では週に1回以上、もしくは1回2ピースの頻度・量が採用されています。継続して食べることを意識し、食べ過ぎには注意しましょう。
参考
1)T. Suzuki et al. Association between the Intake/Type of Cheese and Cognitive Function in Community-Dwelling Older Women in Japan: A Cross-Sectional Cohort Study. Nutrients 2024,16(16)2800
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11357307/
2)T. Suzuki et al. The Effects of Mold-Fermented Cheese on Brain-Derived Neurotrophic Factor in Community-Dwelling Older Japanese Women With Mild Cognitive Impairment: A Randomized, Controlled, Crossover Trial. J Am Med Dir Assoc.2019;20(12):1509-1514
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31562049/
3)C. Laske et al. Stage-dependent BDNF serum concentrations in Alzheimer’s disease. J Neural Transm (Vienna).2006;113(9):1217-1224
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16362629/
4)P. Rasmussen et al. Evidence for a release of brain-derived neurotrophic factor from the brain during exercise. Experimental Physiology 94(10);1062-1069
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/expphysiol.2009.048512
5)M. Sasaki et al. Milk-based culture of Penicillium camemberti and its component oleamide affect cognitive function in healthy elderly Japanese individuals: a multi-arm randomized, double-blind, placebo-controlled study. Front Nutr.2024;11:1357920
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11004446/
6)Y. Ano et al. Tryptophan-related dipeptides in fermented dairy products suppress microglial activation and prevent cognitive decline. Aging (Albany NY)
. 2019;11(10):2949-2967
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6555451/