認知症と脂質代謝の関連性は?脂質代謝の改善につながる生活習慣を解説
2024年12月18日
血液中の脂質の量が正常範囲から外れている脂質異常症は認知症のリスクを高めるとされています。脂質代謝は身体の脂肪量を適切に保つために重要であるため、脂質代謝と認知症との関連が考えられます。この記事では、認知症と脂質代謝の関連性や脂質代謝の改善につながる生活習慣を解説します。
目次
脂質代謝とは
脂質代謝は、細胞内で行われる脂質の合成と分解です。脂質は、エネルギー源や細胞膜の構成物質として体内で利用されます。この脂質代謝に異常をきたすと脂質異常症になりやすいと考えられます。
中年期の脂質異常症は認知症のリスクになる
中年期の高コレステロールは認知症のリスクを高めるといわれています¹⁾。脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やコレステロールの量が正常範囲から外れている状態です。脂質は肝臓で作られたり、食事から取り入れたりされますが、血液中の量が一定になるように調節されます。しかし、身体が脂質量を調整できなくなったり、脂肪を過剰に摂取しすぎたりすると脂質異常症を発症しやすくなるといわれています。脂質異常症が認知症につながる理由として動脈硬化が挙げられます。脂質異常症では動脈硬化が進行しやすいため、脳の血流が悪くなり脳血管性認知症の発症につながると考えられています。
認知症と脂質代謝の関係
脂質異常症が認知症のリスクを高めることを示しましたが、では、脂質代謝とはどのように関係しているのでしょうか。脂質のうちHDLコレステロールが高いと認知症リスク低下につながるといわれています。一方、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪が高い群では20年間での注意力や処理能力の低下と関連し、総コレステロールと中性脂肪が高い群では20年間での記憶機能の低下が強かったと報告されています²⁾。
このように、脂質の中でもLDLコレステロールや中性脂肪が高いことは認知症のリスクとなり得ます。そのため、脂質代謝が低下すると認知症につながる可能性があると考えられます。
脂質代謝を改善し認知症を予防する生活習慣
脂質代謝の改善には下記の生活習慣が大切と考えられます。
- 脂質を控えた食事
- 適度な運動
- ストレスの発散
- 定期的な検査
それぞれ詳しく解説します。
脂質を控えた食事
脂質を控えめにすることで、脂質異常症の改善や脳血管性認知症の予防につながります。特に、肉類の脂身や鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪、ココナッツミルクなどには、血中コレステロールを上げる作用のある飽和脂肪酸が多く含まれるため、これらの動物性脂肪や脂身の多い肉を控え、赤身肉や脂身をとり除いた肉を食べましょう。 また、食物繊維を多く含む野菜類・海藻・きのこの摂取も大切です。また、過剰なカロリー摂取は、中性脂肪の蓄積につながるため注意しましょう。
適度な運動
適度な運動は脂質代謝の改善に効果的です。歳をとるほど外に出て身体を動かす機会が億劫になりがちです。運動はカロリー消費やコレステロールの減少につながり、認知症の予防につながると考えられます。無理に一気に運動すると身体を痛めてしまうので、一日5分でも毎日こまめに継続すると良いでしょう。
ストレスの発散
ストレスは暴飲暴食につながり、脂質代謝に影響することも考えられます。そのため、ストレスを溜めない生活やストレスを別の方法で発散しましょう。例えば、散歩が好きなら週2回でも近くを散歩したり、自宅で映画を見ることが好きなら映画に没頭する時間を作ったりするのも良いでしょう。
定期的な検査
コレステロールや中性脂肪の数値が高くても症状が出現しないため放置しがちで、その結果、動脈硬化を促進させ、脳血管性認知症や高血圧のリスクが高まります。このため、認知症を予防するためにも、定期的な検査を受け、以上があれば医師の指導の下対応することが必要です。
認知症を予防するために脂質代謝を改善しましょう
血液中の中性脂肪やLDLコレステロールが多くなる脂質異常症は認知症のリスクとなるといわれています。このため、脂質代謝と認知症と関連性があり、そのため、脂質代謝を改善することが認知症の予防につながると考えられます。
今回は「脂質を控えた食事」「適度な運動」「ストレスの発散」「定期的な検査」の4つをご紹介しました。脂質を摂取しすぎないことや脂質代謝を高めるために運動することが大切です。また、定期的な検査も必要になります。血液中の脂質は増えても症状が出にくく、進行してから分かることが多いため、定期的な検査により自分の身体の状態を認識しておきましょう。
【参考文献】
1)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_50_6_727.pdf
2)Power MC, Rawlings A, Sharrett AR, et al. Association of midlife lipids with 20-year cognitive change: A cohort study. Alzheimers Dement. 2018;14(2):167-177. doi:10.1016/j.jalz.2017.07.757