認知症と栄養の関連性とは?予防方法も解説
2024年09月30日
認知症の方に低栄養状態が少なからず見出されることから、認知症と栄養との関連が指摘されています。また、高齢者の食事は、小食で肉より野菜や穀類を中心とした食事が多い傾向があるともいわれています。このような食事は健康的にもみえますが、慢性的な栄養不足に陥る危険性があり、認知症発症にもつながっていきます。この記事では、認知症と栄養の関連性、認知症を予防するための食事について解説していきます。
認知症と栄養の関連性とは
認知症患者では低栄養状態の人が多く、重症度が上がるほど直近3ヶ月での4.5 kg超の体重減少リスクが高まるという海外の報告もあります¹⁾。低栄養状態は、死亡や生活の質、認知機能を低下させる要因の一つであり、認知症のリスク因子にもなると考えられます2)3)。このように、認知症と栄養は相互に関連しています。
認知機能の低下によって、買い物や食事の準備など実行機能の低下、嚥下障害などの症状が現れるため、十分な食事を摂れず低栄養状態が進行する可能性があります。そして、低栄養状態は日常生活を送ることの困難にもつながり、寝たきりの生活になりやすいため認知機能が低下すると考えられています。このように、認知機能の低下や低栄養状態は双方に悪影響を与え、認知症発症リスクを高めると考えられます。
タンパク質や脂質も忘れずに
70歳以上の男女について動物性タンパク質の指標である血中のアルブミンや、脂質の指標であるHDLコレステロールを測定し最長4年間追跡調査した結果、追跡開始時始時にこれらの値が低い人は高い人よりも約1.8倍〜2倍も認知機能の低下リスクが高い傾向であったという報告があります3)。認知機能低下リスクが高くなる理由の一つとして、タンパク質や脂質は脳を含めた全身の細胞を作るのに必要な材料であるためと考えられます。なお、脂質やタンパク質の原料になるアミノ酸には体内で合成できないものもあり、これらについては食べ物からの摂取が必要になります。
認知症予防のために有効と考えられる食事
「地中海食のような食事」で認知症予防効果が期待できる可能性があります4⁾。地中海食とは、果物、野菜、魚介類が含まれ、他にはナッツ類、オリーブオイル類、乳製品、豆類、ワインなどがあります。地中海食でよく取り入れられるオリーブオイルやナッツには、オメガ3脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸が含まれています。オメガ3脂肪酸には血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす作用があるため、その摂取は動脈硬化・心臓病などの予防につながると考えられます。動脈硬化は認知症の危険因子でもあるため、オメガ3脂肪酸の摂取は間接的に認知症予防につながると考えられます。なお、オメガ3脂肪酸は体内で合成できないため、食物から摂取する必要があります。なお、赤ワインには認知機能保持に有益なポリフェノールが含まれているといわれますが、過度な飲酒はMCI(軽度認知障害)から認知症への移行リスクが高まる可能性があり、飲みすぎには注意が必要です。
また、日本食が認知症予防に関連があると報告されている研究もあります5⁾。日本食は魚・野菜・きのこ・いも・海藻・漬物・大豆製品・果物・緑茶などをよく摂取することを特徴としています。上記のように、地中海食と日本食は共通する部分があります。
日本食は緑黄色野菜や魚を食べる機会が多く、緑黄色野菜に含まれる葉酸には認知症の原因になるアミロイドβの作用が強まるのを抑える作用があるといわれています。魚の油にはDHAやEPAなどの脳に良いオメガ3脂肪酸が含まれており、これらを摂取できる日本食は認知症予防に効果的といえるでしょう。
バランスの良い食事で認知症を予防しましょう
タンパク質や脂質は認知機能維持において重要な働きをするといわれ、認知症予防のためにはこれらを含めたバランスの良い食事が大切です。高齢になると、小食になり野菜や穀類を中心とした食事になりがちで、タンパク質・脂質の摂取量が減少する傾向があるようです。この結果、慢性的な栄養不足に陥り認知症リスクを高める可能性が指摘されています。野菜の摂取量は1日350g以上が推奨されており、野菜の摂取は重要ですが、魚や肉などの摂取も忘れずバランスよく食べましょう。
また、脂質を取るために調理にオリーブオイルなどを使うとよいでしょう。高齢になると食欲が落ちやすくなるため、適度な運動でお腹を空かせるのも十分な食事を摂るうえで大切なことだといえるでしょう。
【参考文献】
1) Albanese E. et al. Dementia severity and weight loss: a comparison across eight cohorts. The 10/66 study. Alzheimers Dement. 2013; 9: 649-656.
2) Cabrerizo S. et al. Serum albumin and health in older people: Review and meta analysis. Maturitas 2015;81:17-27.
3) Taniguchi Y. et al. Nutritional Biomarkers and Subsequent Cognitive Decline Among Community-Dwelling Older Japanese: A Prospective Study. J Gerontol. 2014; 69: 1276-1283
4) Radd-Vagenas S. et al. Effect of the Mediterranean diet on cognition and brain morphology and function: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Clin n Nutr. 2018; 107: 389-404.
5) Tomata Y. et al. Dietary Patterns and Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2016; 71(10): 1322-1328.