検査できる病院を探す

認知症予防コラム

認知症の発症リスクを軽減するくるみの作用

2024年08月28日

くるみは認知症の発症リスクを軽減するとして注目されている食品です。くるみに含まれる栄養素と作用、脳への影響について説明します。1日にどれくらい食べれば良いかや、おいしく食べる方法もお伝えします。

くるみは、脳の健康を維持し、認知機能の低下を予防するのに役立つ多くの栄養素を含んでいます。特に、オメガ3脂肪酸、ポリフェノール、メラトニンなどの抗酸化物質が豊富です。本記事では、くるみに含まれる栄養素やくるみが認知症予防に役立つ理由について詳しく解説します。

くるみで注目される栄養素

くるみは100g中の脂肪酸総量は67.4gで、そのうち8.96gが植物性オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸など)です1)

そのほかにも、タンパク質14.6g 、マグネシウム150 mg 、ビタミンE 27.9mg、食物繊維7.5gなど、健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれています1)。ほかのナッツと比べて、特に植物性オメガ3脂肪酸が多く含まれているのが特徴です。

植物性オメガ3脂肪酸

ひとつかみのくるみ(約28g)中には約2.5gのα‒リノレン酸が含まれています1)。体内に入ったα‒リノレン酸の一部はEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されますが、その量はわずかとも言われますので、これらのオメガ3脂肪酸は食品で補う必要のある栄養素です。皮膚を健康に保つ働きがあるといわれています。

さらに、心血管疾患のリスクを低減させる効果があると報告されており、国内外で多くの研究が行われています。しかしながら、欧米で実施された個々の臨床研究や複数の臨床研究結果をまとめて解析した結果をみても一貫した結果が得られていません。

一方、日本で行われた臨床研究では、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症が少なく、心血管関連の死亡率も低いことが示されています2)

また、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いと、すべての原因による死亡リスク及び心血管疾患の発症リスクが軽減するという報告もあります3)。この研究では、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いほど、全死亡リスクが約33%減少することが示されました3)

抗酸化作用のある栄養素

くるみにはビタミンEをはじめ、ポリフェノール、メラトニンなどの抗酸化作用を持つ栄養素が豊富に含まれています。なお、サプリメント等では摂りすぎ等の問題もありますので、食品からの摂取がおすすめです。

くるみに含まれるエラグ酸やエラジタンニンなどのポリフェノールには、血漿および LDL(低密度リポタンパク質)の酸化を抑制する作用があり、動脈硬化を予防して心血管疾患の死亡率を低減する可能性が示されています4)

メラトニンは体内で作られますが、食品からも摂取でき、おもに睡眠を調整する働きのある物質です。研究により、フリーラジカル(酸化ストレスをもたらす分子)を中和する作用があることがわかっています。さらに、体内のフリーラジカルを除去する酵素を活性化し、身体全体の抗酸化力を高めることも明らかになりました。メラトニンは組織の酸化ストレスによるダメージを予防し、健康維持に貢献することが期待されます5)

くるみが認知症を予防する理由

くるみに含まれる栄養素は、脳の健康維持をサポートし、認知症の発症・進行リスクを低減することが期待できます。

アミロイドβタンパク質による酸化ストレスを軽減

アルツハイマー病患者の脳内にはアミロイド沈着物がみられます。くるみには、アミロイド沈着物のアミロイドベータタンパク質(Aβ)が引き起こす酸化ストレスや細胞死から細胞を保護する作用があるという動物実験結果があります。この結果、食事にくるみを加えることで、アルツハイマー病のリスクを軽減したり、進行を遅らせたりする可能性が示唆されています5)

酸化ダメージから脳を守る可能性

くるみに含まれるメラトニンには、体内の抗酸化作用の向上を示した動物実験結果があるため、脳の炎症を軽減し、脳細胞を酸化ダメージから守る作用も期待されます6)

認知症予防のために1日に食べたいくるみの量

20歳から90歳の米国成人を対象にした研究によると、20~59歳の成人では平均10.3g/日、60歳以上の成人では平均13.1g/日くるみを摂取しており、摂取量が多いほど認知機能の改善効果が大きいことが示されています7)

くるみ1個(殻を剥いた状態の半分)は約2.5〜3g程度のため、10~13gはくるみ4~5個分に相当します。

おやつにはスナック菓子よりくるみがおすすめ

くるみは、植物性オメガ3脂肪酸や、ビタミンE、ポリフェノール、メラトニンなどの抗酸化物質が豊富に含まれる食品です。心血管疾患リスクやアルツハイマー病の発症・進行リスクの低減、認知機能の低下予防などの作用が示唆されており、食べることで認知症の予防が期待されます。

おやつにおすすめ。くるみをおいしく食べられるロースト方法

ローストすると、香ばしさが増して風味がよくなり、カリッとした食感も楽しめます。お好みのロースト方法で試してみてください。

加熱方法レシピ
オーブン150度のオーブンで15分間加熱します。お好みで焼き時間を追加してください。
オーブントースター予熱2分間+加熱1分間+余熱10分間後、お好みによって加熱時間を追加してください。
電子レンジ重ならないようにくるみを皿に並べ、高温設定で2分ごとに混ぜながら5~6分間加熱します。
フライパン中火(やや弱め)にて2~3分間炒ります。

くるみに含まれるオメガ3脂肪酸は熱に弱く、加熱すると酸化しやすくなります。食べる分だけローストし、ローストしたくるみは食べきるようにしましょう。

毎日のおやつをスナック菓子からくるみに変えて健康な脳の維持をめざしてみませんか?

<参照URL>

1)日本食品標準成分表(八訂)増補2023年|文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

2)日本人の食事摂取基準(2020 年版)|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

3)Harris WS et al The Omega-3 Index can serve as a marker of overall health in older Americans. Erythrocyte Long-Chain Omega-3 Fatty Acid Levels are Inversely Associated with Mortality and with Incident Cardiovascular Disease: the Framingham Heart Study. J Clin Lipidol. 2018 12 718-727

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29559306/

4)K J Anderson et al Walnut polyphenolics inhibit in vitro human plasma and LDL oxidation. J Nutr. 2001 131 2837-2842

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11694605/

5)Balu Muthaiyah et al Dietary supplementation of walnuts improves memory deficits and learning skills in transgenic mouse model of Alzheimer’s disease. J Alzheimers Dis. 2014 42(4)1397-1405

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25024344/

6)Russel J Reiter et al Melatonin in walnuts: Influence on levels of melatonin and total antioxidant capacity of blood. Nutrition 2005 21 920-924

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15979282/

7) L Arab , A Ang A cross sectional study of the association between walnut consumption and cognitive function among adult US populations represented in NHANES. J Nutr Health Aging

2015 19 284-290

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25732213/