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認知症予防コラム

緑茶の淹れ方でストレスや不眠が改善?~緑茶に含まれるテアニンがストレスや不眠を改善します~

2024年06月12日

お茶にはカフェインが含まれており、お茶を飲むと夜に眠れなくなるような印象がありますが、 お茶に含まれるテアニンやアルギニンという成分にはストレスや不眠を改善する効果があることが研究で明らかになりました。

しかし、通常のお茶の淹れ方ではカフェインが多く抽出され、入眠の妨げになってしまいます。カフェインの抽出を少なくし、テアニンを十分抽出するには、お茶の淹れ方にコツがあります。

今回は、静岡県立大学 食品栄養環境科学研究院・茶学総合研究センターの海野けい子先生の研究成果について解説し、ストレスや不眠を改善する効果的なお茶の淹れ方をお伝えします。

お茶の成分に関する研究結果は?

海野けい子先生は、緑茶中の主要なアミノ酸であるテアニンにストレス軽減作用があることを動物実験で明らかにしました。

緑茶を摂取した場合、緑茶の主成分であるカフェインやエピガロカテキンガレート(EGCG)がテアニンのストレス軽減作用を阻害することがわかりました。また、アルギニンがテアニンの作用に共同的に作用することを見いだしました。

テアニン以外の遊離アミノ酸についても検討したところ、グルタミン酸やグルタミンにはストレス軽減効果は認められませんでしたが、アルギニンは優れたストレス軽減効果を示すことが明らかになりました。 テアニンとアルギニンの共存により、カフェインの作用が打ち消されることも示されました。

テアニンのストレス軽減作用に対しカフェインやEGCGが抑制的に作用することから、緑茶中のカフェインを低下させた「 低カフェイン緑茶」をつくり、ストレスと睡眠に関する調査をおこないました。20代、40~50代(中高齢者)および80~90代(高齢者)の参加者に低カフェイン緑茶の「水出し緑茶」を飲んでいただき、ストレスや睡眠への影響を観察した結果、いずれの年代においても対照群に比べ低カフェイン緑茶を摂取していた群でストレスが軽減していることが明らかになりました。

低カフェイン緑茶の睡眠に対する作用についての調査では、 高齢者や中高齢者は予定していた時間より早く目覚めてしまう「早期覚醒」について、低カフェイン緑茶摂取群は通常の緑茶を摂取した群よりも早期覚醒が抑制されていました。また、低カフェイン緑茶の摂取量が多い参加者ほど睡眠の質の高さを示すノンレム睡眠の割合が高まっていました。

抹茶もテアニンを多く含む緑茶です。抹茶は収穫前の約20日間遮光を行うことにより茶葉中のテアニン量の低下を防いでおり、煎茶に比べ茶葉に含まれるテアニン量が多く、カフェインを含んでいる緑茶です。調査により、カフェインやEGCGの含有量が少ない抹茶にはストレス軽減効果があることがわかりました。一般的に上級〜中級の抹茶はカフェインやEGCGの含有量が少ない傾向にあります。

抹茶については抹茶の微細粉末の状態が吸収や代謝に及ぼす影響について、今後さらなる検討が必要とのことです。

緑茶は食品ですが、緑茶に含まれるテアニンやカフェイン、EGCG、アルギニンの組成の違いにより実際にストレスが軽減されたり睡眠に影響が生じたりすることなど、その機能性が明らかになりました。

ストレスを抱えたときには抹茶,夕方には良い睡眠のために低カフェイン緑茶,起床時には気持ちを高める煎茶など,状況に合わせた緑茶の選択が心身の健康増進に寄与するものと考えられます。

テアニンのリラックス効果

テアニンを摂取すると脳波のα波を増やすなどの研究結果から、テアニンにはリラックス効果があるということが古くから知られています。

帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩教授はネズミを用いた実験や、実際に人に投与した臨床研究によって、抗不安効果、抗うつ効果、統合失調症の症状改善作用、記憶力や感覚情報処理の増強作用、睡眠改善作用などがあることを示唆する結果を得ています。

低カフェイン緑茶で不眠改善

お茶にカフェインやEGCGが多く含まれるとテアニンの働きが弱められてしまうため、 お茶を淹れるときは茶葉から溶け出すカフェインやEGCGの抽出量をいかに抑えるかがポイントです。

そこでおすすめなのが、水出し緑茶です。

テアニンは冷水にも簡単に溶け出しますが、カフェインやEGCGは水温が低くなるほど溶けだしにくくなるため、水出し緑茶はテアニンを効率的に抽出できます。

テアニンを多く含む【水出し緑茶】の作り方

水80〜100cc(氷を除く)に対して茶葉10gを急須に入れ、水または氷水を加えて10分間抽出します。

※この方法でお茶を淹れると、カフェインはほんのわずかしか抽出されません。

※テアニンは一番茶で初期の若い芽に最も多く含まれていますので、新茶や玉露などの茶葉を選ぶとよいでしょう。

※水は硬水だと薄く抽出され、軟水だと濃く抽出されるので、硬水の場合は浸出時間を長めにします。

【水出し緑茶】はいつ飲むとよい?

安眠やリラックス効果を高めるためには、夕食後から寝る前に飲まれることをおすすめします。

お茶に含まれるテアニンやアルギニンという成分にはストレスや不眠を改善する効果があり、緑茶を水出しで淹れることでカフェインやEGCGの抽出を抑え、テアニンやアルギニンの効果を最大限に引き出せることがわかりました。

お茶にはさまざまな有効成分があり、茶葉の種類や抽出方法で違った効果を発揮します。

水出しで淹れる低カフェイン緑茶を活用し、ストレスや不眠を改善してみませんか。

参考文献

https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=1389

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/16/052600030/053100003/

https://www.taiyokagaku.com/lab/health/theanine_pickup01/