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認知症予防コラム

朝食をとるタイミングが2型糖尿病のリスクを左右する

2024年03月25日

 朝食を食べない方や出社後に食べる方もいるかもしれませんが、適切なタイミングで朝食を食べると、糖尿病の発症リスクが低下するといわれています。朝食と糖尿病についての研究報告の紹介と、適切な時間に朝食を食べるための対策について説明します。

 忙しい現代において「朝食を抜くことが多い」「朝食は家ではとらずに出社してから食べる」という方もいらっしゃるかもしれません。実は、朝食を食べるタイミングが糖尿病のリスクと関連していることが研究により報告されています。朝食と糖尿病リスクの関連についての研究を紹介し、朝食を朝朝早くとるための対策方法についてお伝えします。

朝8時前の朝食が糖尿病のリスクを減らす

 ISGlobal(バルセロナ世界保健研究所)によって行われた研究によると、朝食を午前9時以降に食べる人は、午前8時以前に食べる人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが59%増加することが明らかになりました1)

 この研究は、フランスの10万3,312人の成人(うち女性が79%)を対象に、食事の頻度やタイミングと2型糖尿病の発症リスクとの関連性を調査したものです。

 参加者が提出した連続しない3日間の24時間の食事記録をデータ解析し、健康状態を追ったところ、研究期間(中央値7.3年)中に963人が新たに2型糖尿病を発症しました。

 2型糖尿病の発症リスクは、午前8時以前に朝食を食べたグループよりも午前9時以降に朝食を食べるグループの方が有意に高かったと報告されています。

 さらに、朝食を午前8時以前に食べる場合に限り、夕食から朝食までを13時間以上空けた場合に、2型糖尿病の発症リスクが低下する可能性があると示されました。夕食後に13時間以上空けてから朝食を午前8時までに食べるためには、午後7時までに夕食を食べる必要があります。

朝食抜きはもってのほか

 米国の研究では、朝食を抜くことが2型糖尿病のリスク増加と関連していることが報告されています2)。毎日決まった時間に勤務している2型糖尿病患者 194 人の睡眠時間と食事記録を調査したところ、朝食を食べない人は、朝食を食べる人に比べて、糖尿病の指標であるHbA1cが有意に高い結果でした。さらに、肥満傾向にあり、夜寝るのが遅くて朝も遅くまで寝るタイプであることもわかっています。

 この研究により、夜遅くまで起きていると朝食を抜く傾向が高まり、糖尿病になりやすいことが示唆されています。夜更かしせずに朝食をしっかり食べる習慣が血糖コントロールに良い影響を与える可能性があります。

わが国の朝食欠食率

 朝食を抜くと糖尿病になりやすくなることがわかっていますが、わが国で朝食を食べない人の割合はどのくらいなのでしょうか。

 2017年の国民健康・栄養調査によると、日本において朝食を抜いている割合は男性15.0%、女性10.2%です。年齢階級別では、特に20代に多く、男性30.6%、女性23.6%が朝食を食べていないという結果でした。次に40代が多く、男性25.8%、女性15.3%、続いて30代で男性23.3%、女性15.1%となっています3)

 2型糖尿病は中高年に多い病気です。良好な血糖コントロールを維持し、将来の糖尿病のリスクを低減するためには、若いうちから朝食を食べる習慣を身に着け、生活習慣の改善に取り組む姿勢が重要です。

朝食を朝早くとるためには

2型糖尿病のリスクを高めないためには、朝食を抜かずに朝8時までに食べることが良いことが示唆されています。朝早くに朝食を食べるためには、夜は早めに寝て、朝早く起きる朝型の生活を送る必要があります。朝食を朝早く食べるための対策方法を紹介します。

覚醒・睡眠のリズムにメリハリをつける

日中は活動的に過ごし、夜間のスムーズな入眠と良質な睡眠を促すようにしましょう4)

・日中は適度な運動を行い、活動的に過ごす

・適切な睡眠時間を確保する(成人の睡眠時間の目安は6時間以上8時間未満)

・朝起きる時間は遅らせない

就寝前にはリラックスする

就寝前に副交感神経の活動を促す状態をつくり、寝室の環境を整えることで睡眠の質を良くしましょう。

・睡眠の質を悪くする入眠前の喫煙・飲酒は避ける

・寝室は心地よいと感じる温度と湿度に保つ

・寝室の照明は明るすぎず、白すぎず、不安を感じない暗さにする

・ぬるま湯での入浴、ヨガ、瞑想、ストレッチ、静かな音楽を聴くなど、リラックスできる方法を見つけて行う

・寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見ないようにする

・起床後は日光を浴びて体内時計をリセットする

朝食づくりの負担を少なくする

朝起きてから朝食づくりにかかる手間を減らせるように工夫しましょう。

・前日の夕食時に朝食の用意も済ませておく

・簡単に調理できる朝食にする(電子レンジ使用など)

・みそ汁用の野菜をカットしておく

・冷凍した果物や野菜をミキサーに入れてスムージーにする

朝食を朝早く食べるための早めの夕食・早寝習慣を

糖尿病のリスクを下げるためには、朝食を欠かさずに食べることはもちろん、朝8時までに食べると、糖尿病のリスクが低くなるとの研究報告があります。朝8時までに朝食を食べるためには、夕食を夜19時までに食べ、質の良い睡眠を十分にとることが大切です。

1) Palomar-Cros A et al. Associations of meal timing, number of eating occasions and night-time fasting duration with incidence of type 2 diabetes in the NutriNet-Santé cohort. Int J Epidemiol. June 2023
2) Sirimon Reutrakul et al. The relationship between breakfast skipping, chronotype, and glycemic control in type 2 diabetes. Chronobiol Int. 31(1):64-71.2014
3) 厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査結果の概要
4) 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針 2014