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認知症予防コラム

インターバル速歩 〜効果的な歩き方で若々しい体に〜

2024年02月26日

健康のためにウォーキングを取り入れている方は多いと思いますが、 体力を向上させる効果的な歩き方があることをご存知ですか?

信州大学大学院特任教授でありNPO法人熟年体育大学リサーチセンター副理事の能勢博先生は、 本人がややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを交互に繰り返すウォーキング方法を提唱されています。これは「インターバル速歩」 という運動です。

60歳前後の中高年者に、インターバル速歩を5カ月間週4回以上継続しておこなってもらったところ、1日8000歩以上ウォーキングをおこなったグループよりも最大酸素摂取量と太ももの筋力が向上しました。

インターバル速歩は、体力の指標である持久力と筋力の両方を向上させています。

今回は、このインターバル速歩について解説していきます。

インターバル速歩とは

インターバル速歩とは、最大酸素摂取量の70%以上の早歩きと40%以下のゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返すトレーニング方法です。早歩き3分とゆっくり歩き3分を1セットとし、1日に5セット以上、それを週4日以上おこなうことが勧められています。

能勢先生らは中高年者246名を、対照群と1日1万歩群、インターバル速歩群の3群に分け、それぞれ5カ月間の介入をおこないました。対照群には従来の生活を続けていただく、1日1万歩群は週4回以上、1日1万歩を目標に歩いてもらう、インターバル速歩群は、週4日以上、1日30分以上を目標にインターバル速歩を実施してもらうことにしました。5カ月間の介入期間中、1日1万歩群は平均で週4.5日、1日の歩行時間64分で、1万135歩の実施、一方、インターバル速歩群は平均で週4.5日、1日の歩行時間は52分、そのうち早歩き33分、ゆっくり歩き19分の実施になりました。ちなみに、インターバル速歩群の実施日1日あたりの平均歩数は8,520歩で1日1万歩群の84%に過ぎませんでした。

測定の結果、インターバル速歩群では、膝伸展筋力(大腿の前の筋力)が13%、膝屈曲筋力(大腿の後の筋力)が17%、最大酸素摂取量が10%向上しました。これは体力年齢で10歳ほど若返ったことになります。 一方、1日1万歩群ではほとんど体力は向上せず、対照群と変わりませんでした。その理由はインターバル速歩群の早歩きは、個人の最大酸素摂取量の70%以上の運動強度になりますが、1日1万歩群は最大酸素摂取量の40%以下に相当する運動強度でしか歩かないからです。

乳酸が出るようなややきついと感じる運動をして初めて体力が向上することが改めて確認できたのです。

インターバル速歩の健康効果

インターバル速歩により、持久力と筋力の向上が認められましたが、その他にもインターバル速歩をおこなうことで多くの健康効果が期待できます。

  •  生活習慣病を改善する

先の実験による血圧の変化を見ると、インターバル速歩群で収縮期血圧が10 mgHg、拡張期血圧が5 mgHg低下しました。この拡張期血圧の5 mgHgの低下は今後5年間に心筋梗塞や脳出血など、循環器系疾患の発症を40%低下させるといわれています。

  •  気分障害を改善する

約700名に5カ月間インターバル速歩を実施する前後で、うつ自己評価尺度(CES-D)のアンケートを実施し、うつ傾向が見られる方々についてインターバル速歩後にCES-D点数の改善が見られました。

  •  睡眠の質を改善する

中高年者約30名を対照群とインターバル速歩群の2つに分け睡眠の質を調査しました。睡眠中の体動を光センサーによって非接触で測定した結果、インターバル速歩群では、最大酸素摂取量の向上とともに睡眠の質が改善しましたが、対照群では改善しませんでした。 これらの結果は、体力の向上が睡眠の質を改善することを示唆しています。

  • 認知機能を改善する

市民200名を対象に対照群とインターバル速歩群に分け、5ヶ月間実施しました。浦上式認知機能テストを用いて認知機能を評価した結果、インターバル速歩群では、最大酸素摂取量が3%、認知機能が4%向上したのに比べ、対照群ではそれぞれ2% 、7%低下しました。 これらの結果は加齢による認知機能の低下の主な原因が、体力(最大酸素摂取量)である可能性を示唆しています。

  •  関節痛を改善する

5ヶ月間のインターバル速歩で膝関節痛が良くなったと答えた人が全体の50%にのぼり、悪くなった人は4%でした。

  • 骨粗鬆症を改善する

50歳以上の女性119名を対象に6カ月のインターバル速歩トレーニングを実施し、その前後でDEXA法による骨密度測定をおこないました。その結果、トレーニング後の値が有意に増加しました。

インターバル速歩の実践方法

以下の点に注意して実践しましょう。 

  • 下半身を中心としたストレッチをおこなった後、視線は25m程度前方に向け、背筋を伸ばした姿勢を保ちます。
  • 足の踏み出しはできるだけ大股になるようにおこない、踵から着地します。 この際、腕を直角に曲げ前後に大きく振ると大股になりやすく効果的です。
  • 早歩きのスピードは個人が「ややきつい」と感じる強度でおこないます。
  • 早歩きの時間は3分を基準とし、3分間の早歩きの後に3分間のゆっくり歩きを挟んで歩きます。
  • インターバル速歩をおこなった後もストレッチを行いましょう。疲労回復につながるといわれています。

では、早速始めましょう!

早歩き3分とゆっくり歩き3分を1セットとし1日に5セットで早歩きが計15分になります。これを週4日実行するのを目標にします。無理をせず、ご自分の体力に合わせて徐々に増やしていくとよいでしょう。

もし、1日30分の連続時間が取れない場合は、例えば、朝10分、昼10分、夕方10分とバラバラに実施してもよく、要するに早歩きの1日の合計が15分以上になればよいでしょう。また、1週間に4日の実施が難しい場合は週末等にまとめて実施されてもかまいません。たとえば、土曜日早歩き30分、日曜日早歩き30分といった具合に、1週間の早歩きの合計が60分以上になればよいでしょう。

NPO法人熟年体育大学リサーチセンターのホームページにインターバル速歩の詳しい実践方法が掲載されています。

ホームページリンク: https://www.jtrc.or.jp/interval/

インターバル速歩を継続しよう!

インターバル速歩は誰にでも継続しやすい内容となっていますが、それでもやはりときには面倒になるでしょうし、いちど休むとそれをきっかけにやめてしまうことがあります。

歩くのが面倒と思わないように、歩くときの服や帽子、靴を身に付けやすい場所に準備したり、歩いた後に休憩するためのくつろげる空間などを用意したりするとよいでしょう。

インターバル速歩をする時間を決めて、習慣にできれば長続きしやすくなります。

午後3時から6時ぐらいは、筋肉が柔らかく怪我をしにくいと言われ、お勧めの時間帯です。

家族や友人、近所の仲間と誘い合わせて歩いてみるのはいかがでしょうか。

インターバル速歩は体力を向上させるだけでなく、生活習慣病や骨粗鬆症を改善したり、睡眠の質を高めたり、認知機能も改善したりできる素晴らしい健康法といえるでしょう。

さらに、いつでもどこでも取り組むことができ、マシンなどのトレーニング機器も必要なく、安価に実行できるトレーニング方法です。

参考文献

①能勢博著、 ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方、講談社(2019)

② https://www.jtrc.or.jp/interval/