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認知症予防コラム

 今よりも少しでも運動して健康になろう!

2023年11月30日

今よりも、少しだけ運動を行うだけでも健康に過ごせるかもしれません。低強度の運動や週1回の運動でも健康に寄与することがわかってきています。運動習慣のない人が運動を始める前に注意したい点もまとめていますので、参考になれば幸いです。

健康によいとされる運動ですが、本格的な運動を毎日行わなくても、軽い家事などや週1回の運動でも健康によい影響があることがわかってきています。腎臓病でも単回の中強度の運動は腎機能低下に影響しない可能性も示されました。運動習慣のない方が、運動を始める前におさえておきたいポイントも紹介していますので、今よりも運動量や運動の機会を増やして健康になりましょう。

よく動くことと脳の体積が関係

国立長寿医療研究センターの牧野氏らの研究によると、高齢者は身体活動量が多いほど脳の体積が大きい傾向が見られました。さらに、心血管疾患のリスクが高い集団でも身体活動量と脳の体積の関連が見られることが報告されました。

この研究は愛知県高浜市の60歳以上の一般住民1,220人中、認知症(認知症疑い含む)やパーキンソン病を含む精神神経疾患、心血管疾患、要支援・要介護者を除く725人を対象に行われたものです。身につけた3軸加速度計により、日常生活における身体活動の強度と時間を把握し、脳の体積は皮質灰白質、皮質下灰白質、大脳白質の3か所で計測されました。

この研究により、強度にかかわらず、身体活動量が多いほど大脳白質の体積が大きくなり、さらに、心血管疾患リスクの高い群では、軽い家事やゆっくりの歩行やなどの低強度の身体活動と大脳白質との関連が有意に見られています1)

ただし、因果関係までは示されておらず、今後、さらなる研究により、身体活動と脳の健康の関連がより詳細になることが期待されます。(2022年7月13日)

週に1~2時間の運動が精神面の健康も維持

メンタルヘルスの観点からもBlack Dog Instituteによる研究によると、週にたった1~2時間の運動がうつ病の発症を予防することが示されています。

この研究は、33,908人のノルウェーの成人を対象に、11年間にわたって運動量と抑うつ症状・不安症状を監視したものです。年齢や性別に関わらず、週に1~2時間の運動を行っている場合と比較して、まったく運動をしない場合ではうつ病発症リスクが有意に高く、週に1~2時間の運動がうつ病の予防に有効であることが示唆されました2)

単回の中強度運動は腎機能へ与える影響は少ない

これまで、運動によって筋肉への血流が増えることによる腎血流量の低下や、運動後の尿蛋白が陽性になることから、腎機能が低下している場合は運動を控える指導が主流でした。しかし、最近では、中強度の運動が腎機能へ与える影響は少ないという知見も徐々に蓄積されており、腎臓リハビリテーションの一環として、ガイドラインでも中強度の有酸素運動と筋力トレーニング、ストレッチが推奨されています。

福岡大学の川上氏らの研究では、単回の中強度運動は腎血流量および腎機能に影響を与えない可能性が報告されました。

この研究は、8人の健康な男性(平均38歳)を対象に、自転車エルゴメーターを用いて30分間の中強度の有酸素運動を行い、その後の腎血流量と腎臓のダメージを示すアルブミンやクレアチニン、シスタチンC、KIM-1などの指標の変化を総合的に調査したものです。運動後60分までの回復期間において、腎臓へのダメージを示唆する有意な変化は見られなかったとのことです3)

ただし、今回の研究は空調管理と水分摂取可能な環境下にて、腎機能が正常な少人数を対象にして運動を一回のみ行っており、習慣的に運動を行う場合、異なる条件の対象者や発汗や脱水が起こる環境下におけるさらなる調査も必要という見解が示されています。

運動習慣のない人が運動を始める前に

日常的に運動習慣がない人が、いきなり「毎日ウォーキング30分」と目標を立てても「しんどい」「面倒」が先に勝ち、運動を続けられないどころか、運動を始めるまでに至らない場合もあるでしょう。自分の体力や運動レベルに合った無理のない運動と時間を選び、目標設定を行うことが大切です。

健康のための運動は、有酸素運動(持久力)、筋力トレーニング(筋力)、柔軟運動(柔軟性)が基礎となります。また、普段の日常生活における低強度の身体活動でも脳の体積と関連があることや週1回が期待できることから、まずは座る時間や横になる時間を減らすことを目的に、自宅でのストレッチやスクワット、プランクなどの筋力トレーニング、立って行う家事を増やす・買い物や散歩で外に出る・階段を使うなど、とにかく体を動かす機会を増やすといった低い目標から始めることがおすすめです。徐々に散歩や体操、興味のあるスポーツへの参加など、時間と機会を増やしていきましょう。

そして重要なのが運動を楽しむことです。自分が楽しめる運動を見つけ、友人や家族と一緒に行うなど、楽しいと感じる環境で取り組むことで、モチベーションを維持することができます。

病気のある方や身体に痛みのある方は運動を始める前に医師に確認しましょう。

1)Keitaro Makino et al. Light intensity physical activity is beneficially associated with brain volume in older adults with high cardiovascular risk. Cardiovascular Frontiers in Cardiovascular Medicine Vol9 .2022

2) Neurosciencenews One Hour of Exercise a Week Can Prevent Depression

3)Shotaro Kawakami et al. The moderate-intensity continuous exercise maintains renal blood flow and does not impair the renal function. Physiological Reports Vol10(15).2022