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認知症予防コラム

認知症予防に効果的なお酒 ~適量で予防~

2020年12月03日

12月 赤ワイン煮

今回は3回目。

毎回、認知症予防に効果のある食材を使って特別メニューでお伝えします。

認知症予防に良いアルコールは

年末年始、忙しい日々の中でお酒を飲む機会が増えていませんか。
さて、ここで質問。認知症予防に良いアルコールは次のどれでしょうか。

日本酒、焼酎、どぶろく、泡盛、紹興酒、マッコリ、ビール、ウイスキー、
赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、シードル、ブランデー、カルヴァドス、
ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ、キルシュワッサー、アクアビット、・・・

お酒はエチルアルコールが含まれた飲料の総称ですが、実に多くの種類があります。原料では米や麦、トウモロコシなどの穀物、そしてブドウやリンゴ、さくらんぼなどの果実に分類されます。製造方法での分類は醸造酒・蒸留酒・混成酒があります。さて、認知症予防に良いアルコールとして最も注目されているのはズバリ!赤ワインでしょう。はーい、正解!いやちょっと待ってください。
ちなみに赤ワインも白ワインもどちらも原料はブドウ。白より赤のほうがいいって思っている人は多いのでは?なぜでしょうか。

赤ワインと白ワインは製法が異なるため色も味もそれぞれ異なります。赤ワインはぶどうを潰してからすぐに搾らずに果汁とともに皮も種も一緒に発酵してから圧搾してワインにします。皮というのはアントシアニン色素の効能だけでなく栄養価やうま味があり、発酵によって溶け出します。成分としてはポリフェノールが脚光を浴びて抗酸化作用が強いとされています。果物で認知症予防 ~Berry(ベリー)を食べればベリーグッド!~で紹介しました「マインドダイエット」※の積極的にとりたい10種類の食品の中に「適度な量のワイン」というのがありましたね。さて、みなさんの考える適度な量とはどのくらいでしょうか。
正解は「適量のワインは1日にグラス1杯程度」です。上品にじっくり味わっていただきましょう。

「マインドダイエット」:アルツハイマー病などの認知症を予防するために効果的な新しい食事スタイル。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4532650/

しかしながらワインを飲むことが良いということではありません。今のところワイン自体が認知症予防に効果的という研究はなく、ワインを適度に飲むような食生活。さまざまな食品との組み合わせという多様性がポイントなのです。飲まない習慣の方が無理にワインを飲まなくちゃなんて思わないでくださいね。

日本酒より焼酎が良いってホント?

お酒の種類に関してよく聞かれる質問は、「日本酒より焼酎が良いと聞いてから変えました。先生、血糖値にも良いのでしょ?」というもの。糖尿病を気にしておられる方や血糖値が高めの方は、本当は日本酒が好みでもちょっぴり我慢して焼酎を選んでいるのではないでしょうか。
まずは健康のためにお酒の種類を気にして選んでいるという証拠であり、これは立派なこと!まずは「〇〇さん、偉いですね。好きな日本酒を焼酎に変えて健康管理をしているのですね。」と褒めてさしあげます。しかし、ここでポイントは量です。すかさず質問をします。
「〇〇さん、焼酎に変えてどのくらいの量を飲んでいるの?」と聞くと、「コップでお湯割りを2杯かな。原酒にしたら日本酒と同じ1合くらいかな。」とのこと。うーん、それではアルコール量は逆に1.5倍に増えてしまっています。

日本酒は醸造酒、焼酎は蒸留酒ということもあり日本酒には糖分が含まれていて血糖値をあげやすいということですが、1合の日本酒には炭水化物は6~8g程度。焼酎には炭水化物は含まれません。しかし、大量飲酒しない限りはそれほど多い量とは言えません。それよりも日本酒はアルコール度数が約15%に対して焼酎は25%程度とかなり高いためにアルコール量がぐんと多くなるのです。
 ついついたくさん飲んでしまうようなお酒や度数が高いお酒は要注意。どれが良いかという種類より、「適量飲酒」※が重要です。

※適量飲酒:アルコールの量が1日20g程度までです。

適量の目安

  • 日本酒…1合
  • ビール…中瓶1本(500ml)
  • 缶チューハイ…1缶(350ml)
  • ウイスキー…ダブル1杯
  • 焼酎…コップお湯割り(中くらいの濃さ)1杯
  • ワイン…小グラス2杯

酒は百薬の長、されど…

「酒は百薬の長」(出典『漢書』)という言葉は多くの方が知っているでしょう。この言葉の後には続きがあります。それを知っていますか。
「酒は百薬の長、されど〇〇の元」
さて、次のうちどれでしょうか。

  1. 喧嘩(けんか)
  2. 不眠(ふみん)
  3. 万病(まんびょう)

正解は、3.の「酒は百薬の長、されど万病の元」 です。
喧嘩も不眠も間違いではないですね。酒を良いとするには「適量ならば」という条件つきです。
 そしてまた「徒然草 175段」においてはこんな一節が…。
「百薬の長とはいへど、よろづの病は酒よりこそ起これ。…後の世は、人の智慧うえを失ひ、善根を焼くこと火の如くして、悪を増し、よろづの戒を破りて、地獄におつべし。」
ひぇー、恐ろしいですね。

飲酒で認知症になる人のパターンとは!

アルコールを多量に飲むような飲酒習慣は確実に脳に影響を及ぼします。飲みすぎの人は脳が委縮を加速させ、脳梗塞などの脳血管障害を引き起こしやすくなります。また、ビタミンB1欠乏による栄養障害も結果的には認知症へとつながります。
飲酒で認知症になる人のパターンとして、飲みすぎで転倒して頭を打ち、慢性硬膜下血種を引き起こす場合が多いのです。慢性硬膜下血種とは頭蓋内で脳の表面に緩徐に血液がたまって次第に脳を圧迫する病気で、飲酒する男性に多く発生しています。
さあ、飲みすぎない!脳を萎縮させないためにも食事からの抗酸化物質、そして注目のビタミンB群(B6,B12,葉酸)をしっかり摂取。

というわけで、今回は

「りんごの赤ワイン煮 クリスマス風味」

を紹介します。

クリスマスの時期にヨーロッパの各地ではクリスマスマーケットで赤ワインとシナモンやクローブなどの香辛料、ちょっぴり甘味を加えて温めて作る「グリューワイン」を楽しむ習慣があります。 北欧でも親しまれていて、グロッグまたはグレッグという名前でホテルなどでもカウンターの上にジンジャークッキーと一緒にセッティングされていたりします。ちょっぴり残った赤ワインとリンゴ、シナモンの相性は抜群!クリスマスにぴったりです。ビタミンB群豊富な豚肉、牛レバー、にしんなどに添えて認知症予防!

12月の献立:さっと煮るだけ!~りんごの赤ワイン煮 クリスマス風味~

材料(2人分×2食分)

  • りんご 1こ
  • 赤ワイン 100ml
  • 甜菜(てんさい)糖 大さじ2
    ※甜菜糖がなければ砂糖でもOK
  • シナモン 適宜

現在、日本で栽培されているりんごの品種は100種前後、世界的には数千~1万種ほど。約半分が「ふじ」。筆者おススメは小粒の「紅玉」です。写真で最も大きいのは「世界一」。その他の紅いりんごは「秋映(あきばえ)」、「千秋(せんしゅう)」、「つがる」、青・黄色りんごは「王林」、「トキ」。今回は赤ワインを使うので紅系を選ぶと良いでしょう。

①りんごを洗い、皮は剥かずに1㎝厚み程度の扇形に切る。

りんごの自然なワックス

りんごの表面がべとつくようなものがありますが、これは防カビ剤や防虫などの農薬ではありません。りんごが熟してくると生成される成分の自然のワックスです。リンゴの中の水分やうま味を外に逃がさないようにする働きがある自然の仕組みって素晴らしいですね。洗いながら香りを楽しんでください。五感のうち、嗅覚はもっとも記憶に残る感覚です。品種や産地、熟度によっても香りが違います。りんごの香り、あなたはどんな思い出と結びついていますか。

② 鍋にりんごと甜菜(てんさい)糖を入れて火にかける。

③ しんなりするまで煮詰めたら赤ワインを入れて中火で5分程煮る。

④ シナモンをふったら混ぜて火を消す。

⑤ 皿に盛ってできあがり。

わたしのワンポイント

  • 材料えらび:品種の異なるりんごを組み合わせてもGood。残っているベリー系のジャムがあればプラスしてみると味のバリエーションが増えます。香辛料もシナモンだけでなく、クローブやオレンジピールなどお好みで。
  • 保存煮詰めたりんご煮は冷凍できます。冷凍保存用袋に入れて平らにのばしておけば使うときに好きな分だけ割って取り出し、解凍することができます。
  • 食べ方:温かくしても冷たく冷やしてもおいしいです。そのまま食後のデザートに。朝食のヨーグルトと一緒に。焼いたり煮込んだ肉料理や甘辛で炊いた魚料理の皿に添えて一緒にいただきます。りんごを角切りにしてトロトロに煮詰めておくと料理の上からソースのように回しかけることもできます。
    チーズとも相性抜群。特に白かびチーズ(カマンベールやブリーなど)、青かびチーズ(ゴルゴンゾーラ、ロックフォール、スティルトンなど)、ウォッシュタイプのチーズ(ポンレベックなど)、ハード・セミハードタイプのチーズ(ゴーダ、コンテ、エメンタール、エダムなど)と一緒に。
健康度★★☆
おいしさ度★★☆
簡単度★★★

河口 八重子
Nuts Create(ナッツ クリエイト)代表
URL: http://nutscreate.com/
国立病院機構 京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室
研究員・管理栄養士