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認知症予防コラム

様々な具材で鍋料理 ~認知症予防鍋を作ろう~

2020年11月05日

11月 鍋

今回は2回目。

毎回、認知症予防に効果のある食材を使って特別メニューでお伝えします。

あなたはどんな鍋料理がお好き?

ぐっと冷え込んできましたね。こんな季節はやはりなんといっても心も体もあたたまる鍋ですね。家族で囲む鍋、同僚と食べる鍋もいいですし、一人鍋もすっかり定着しています。

食材や地域によってさまざまな鍋料理があります。基本となるダシや具もそれぞれに特徴がありますね。

肉がメインの水炊き、もつ鍋、ぼたん鍋、魚介がメインのあんこう鍋やてっちり、石狩鍋などが有名です。最近では野菜が主役のトマト鍋、そしてキムチ鍋やカレー鍋、豆乳鍋なんていうのもありますね。どんな鍋がお好みでしょうか。 日本全国に郷土料理として鍋料理があります。皆さんはどれを食べたことがありますか。小さい時から親しんでいる鍋、旅先で温泉の後にいただいた鍋、あの人と一緒につついた鍋…どんな思い出がありますか。ほんの一部ですが、見ているだけでおいしそう。あれこれ食べてみたくなりますね。

鍋料理のメリットはまさに食の多様性

さて鍋料理は社会学的にも心理学的にもさまざまなメリットがあると言われています。人と鍋を囲んで一緒にいただくことでより良い関係性が構築できるようですし、丸い鍋を見ていると心が落ち着いたり安心感が増すとか。皆さんはいかがですか。

そして栄養学的にも利点は多く、

  1. 野菜をたくさん食べられる
  2. 低エネルギー
  3. 塩分を減らせる

等々ありますが最大のメリットは多種類の食材をいただけること。つまり食の多様性が良いのです。しかも鍋ひとつを使って加熱するというかんたんな調理でいただけます。また、具の組み合わせや基本のだしを変えると風味もいろいろ楽しめてバリエーションも豊かです。多様な食品を食べる人は生活の自立度が高いことが報告されています。

さらに、国立長寿医療研究センターが今年報告した結果(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27380888)でも、地域在住の60歳以上の方を対象に調査したところ、いろいろな食品を食べている人は認知機能が低下しにくいことが示されました。
食の多様性とは単に食事の中身(栄養素)そのものが良いということだけでなく、以前にもお話しましたがさまざまなものを食べる食行動パターンがオススメということにもなりますね。

認知症予防におススメの具の組み合わせとは?

認知症予防の観点から多種類の食材を食べるという意識を持つことはとても大切です。鍋料理をするのにおススメの具はいろいろとありますが、日頃なかなか食べにくい具をうまく組み合わせるのもコツ。そしてポイントは抗酸化作用のあるビタミン類や食物せんい、そして不飽和脂肪酸を多く含む食材です。
ぜひ召し上がってほしい私のおススメの具の組み合わせは以下の5種類。

さて、食材が決まったら、

  1. 冷蔵庫のチェックをして買い物メモを。
  2. どの店に買いに行くかを決めて、歩きやすい靴の用意も。
  3. お店では表示もじっくり見ながら探検。うろうろしながら歩数を稼いで。
  4. 旬の食材は五感を刺激、脳も活性化。ぜひ手に取って。新しい食材を見つけたら食べ方をお店の人に聞いてみて会話するのも効果的。
  5. 食材がそろったら、さてどうやって調理しようかなと考えながらワクワク。

はい、これで脳はずいぶんと刺激されましたね。
調理の前に少し「すり身」についてご紹介します。

すり身は日本が発祥!便利ですぐれた食材をもっと活用して

すり身というのはちくわやかまぼこなど原料となるスケソウダラなどの魚を塩やでんぷんなどを加えて食感を調えてすりつぶしたものです。実は日本(北海道網走市)はすり身の発祥の地、「SURIMI(すりみ)」は世界に通用する言葉になっています。1960年頃北海道網走で、道立水産試験場が冷凍すり身の技術を開発し、かまぼこ、はんぺん・魚肉ソーセージなどの水産練り製品原料としてスケソウダラが利用され始めました。鮮度落ちの早いスケソウダラを活用できるようにしたこの技術は水産業界における世界三大発明の一つとされています。
すり身からかまぼこ、ちくわなどの練りものが作られています。独特のやわらかさと歯ごたえがあり、うま味もあって簡単な調理で食べられます。
魚は体にいいのはわかっているけど料理するのが面倒とか、骨があって食べにくいなどの理由で魚の食べる頻度が減ってしまうものです。そんな時はすり身を使うことをおすすめします。鍋だけでなく通常の汁物や煮たり焼いたりしていただけますので重宝します。冷凍保存ももちろんできますので常にストックしておきたいですね。

練りものは栄養的にもすぐれもの

魚のたんぱく質は良質でバランスばっちり

食べものの栄養価はそれを構成するアミノ酸の種類と量によって評価されます。高齢になると「たんぱく質をしっかり摂りなさいね」と言われますが特に「必須アミノ酸※」と呼ばれるものは人体にとっては必要不可欠。魚のたんぱく質はこれらの必須アミノ酸をバランスよく含んでいますのでおすすめです。

※「必須アミノ酸」はバリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、トレオニン(スレオニン)の9種類

塩分は味のメリハリでうまく利用して

練りものには塩分が多いのではと心配される方もいらっしゃるようですが、市販の惣菜やしらす干しなどのひもの製品などに比べると多くありません。鍋などでは練りものの塩分をうまく利用して、汁自体は薄味にして具に塩気を感じるという味のメリハリをつけるほうが減塩になります。認知症予防には減塩も大切です。

低脂肪であり良質の油脂

魚のあぶらの代表的なものはDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸は脳内にアミロイドβが溜まるのを防ぐ働きがありますのでアルツハイマーの予防効果があり。さらに血栓や動脈硬化の予防になります。

というわけで、今回のレシピとして

週に1度は作って食べよう!
体も心も温まる「認知症予防のすり身鍋」
を紹介します。

11月の献立:~「認知症予防のすり身鍋」~

とにかくまずはシンプルに作りましょう

材料(2人分)ひとり分の土鍋を2つ使用

  • すり身(冷凍) 100g
  • かぼちゃ(冷凍) 100g
  • 豆腐(もめん) 150g
  • 生しいたけ 4枚(100g)
  • 白菜 80g
  • 水菜 40g
  • ねぎ 20g
  • ゆずの皮 適宜
  • 水 800ml
  • 昆布 8cm角1枚
  • 塩少々

作り方

①鍋に水と昆布を入れる。
※時間があれば30分くらい昆布を水につけておく。急ぐときはすぐに②へ。

②野菜は食べやすい大きさに切り、具を①の鍋に投入する。
※ポイントは煮えにくい野菜(白菜の芯に近いところ)やきのこ、豆腐、すり身はなどは先に入れて。青みの葉野菜(水菜など)や煮崩れしやすいかぼちゃは最後に。   

※すり身の代わりにはんぺんなどの練り製品を使用してもOKです。ふんわりした食感のものがおススメです。   

③鍋をコンロにかけて具に火が通ったら、味を調えてできあがり。

ダシの応用

昆布だしの代わりに、別の鍋で骨付きぶつ切り鶏肉を水からコトコト炊いて鶏のダシを具と合わせてもおいしい。生姜スライスを一緒に入れて煮ると風味が良いです。浮いてきた油やアクを取り除けばおいしい鶏ダシができあがります。
鍋でいただくときは鶏肉も一緒に入れましょう。

わたしのワンポイント

  • 具の組み合わせ:決まりはありませんが旬の食材を加えると季節感が出ます。
  • 味のアクセント:塩分のあるものを1つ加えると味のメリハリがうまれます。
  • 香りのポイント:ゆずの皮や季節の香味野菜(山椒の葉や大葉など)を少し加えるとぐっと味が引き立ちます。なければ七味唐辛子などもお好みで。
  • 煮過ぎないで:練り製品は煮過ぎるとうま味が逃げ出し、味がぼけてしまいます。ふんわりして温まる程度の10~15分くらいで仕上げるといいですね。
  • 楽しく作る!:とにかくルールはありませんので気軽に楽しく作ること。バリエーション豊かに。
健康度★★★
おいしさ度★★★
簡単度★★★

河口 八重子
Nuts Create(ナッツ クリエイト)代表
URL: http://nutscreate.com/
国立病院機構 京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室
研究員・管理栄養士