認知症予防に「笑い」のすすめ。楽しく笑って免疫力をアップしよう!
2023年05月18日
ストレスと免疫機能は密接に関わっており、ストレスがかかると脳の血流が低下して脳内の炎症などが起こり、認知機能が低下することがわかっています。今回は免疫力を高める方法として「笑い」に注目し、笑いと認知機能との関係や日常的に取り入れられるおすすめの習慣について紹介していきます。
ストレスによる脳内炎症が認知機能を低下
強いストレスや慢性的なストレスにより脳の血流が低下すると言われていますが、脳の血流低下により、脳内の炎症、脳の免疫細胞であるミクログリアの過剰な働きや神経細胞が集まる脳の白質部分の傷害が生じて認知機能の低下をもたらすことがマウスを用いた実験によって示されました。1)
ストレスと免疫機能
ストレスがかかると、ステロイドホルモンや神経伝達物質が分泌されて交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、免疫機能を担っている白血球の働きが低下すると言われていま
白血球にはリンパ球、顆粒球、マクロファージの3種類の免疫細胞が存在しており、リンパ球にはがん細胞や病原体に感染した細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)も含まれます。ストレスによって免疫機能が低下すると、体を守る働きの低下や細胞の過剰な活性化による炎症などが生じます。
免疫と脳は日常的に相互に作用しており、免疫を高めることは脳を守ることにつながると考えられます。
免疫力を高め、認知機能の低下を予防する「笑い」
1994年に発表された伊丹医師らによる研究で、男女19人が漫才・漫談・喜劇などを3時間見て大いに笑うと見た直後においてNK細胞の活性上昇が認められたという報告があります。さらに、免疫活動性の指標を示す値が高すぎる人は低い値となり、低い人では高い値となって、免疫力をただ上げるだけではなく、免疫機能の正常化にも働くことが示されました。2)
また、病院で開かれる寄席の落語を鑑賞して笑った人は脳の血流量が増えたという報告もあります。
笑いと認知機能に関する調査も行われており、ほとんど笑わない人はほぼ毎日笑う人に比べて認知機能が低下するリスクは3.61倍高く、よく笑う人は認知機能が低下しにくい可能性も示唆されました。
笑いがもたらす効果
笑いによってもたらされるのは免疫力の向上に加え様々な効果が考えられています。
- NK細胞が活性化して免疫力が高まる
- 免疫機能が適切に働くようになる
- 脳血流が増加して脳が活性化する
- 認知機能が保たれやすくなる
- 自律神経のバランスが整う
- 血糖値の上昇を抑える
「つくり笑い」でも脳の血流量が増加する
「漫才を見る」「落語を聞く」などは受動的な笑いですが、能動的な笑いである「つくり笑い」や「人に微笑みかけられる」だけでも脳の血流量が増加するといわれています。
たとえ壁に向かって微笑みかけるだけでも、笑いによって快の感情が誘発されて自然な笑いへと変わるのです。他の人の微笑みを受け取るだけでも快の情動が生まれます。微笑みかけられる相手は親しい間柄ほど血流量が増加するという結果も得られています。
「笑い」の効果を得るためのおすすめの習慣
免疫を上げたり、脳の血流量を増加させたりするポイントとなるのは「笑う」ことで生まれる快の情動です。「自分一人で笑える本や映画を見つけて楽しむ」「わざと笑顔をつくる、笑う」方法もありますが、人とのコミュニケーションの中で「笑い」は自然と生まれます。「笑い」の効果を得るために、日常的に取り入れられる習慣を紹介します。
取り入れたい習慣 | 具体的な内容 |
・漫画・映画・本などを楽しむ | 自分が笑えるもの、見ると楽しくなれるものを見つけて日常的に楽しむ |
・いつでも笑顔で過ごす | いつも笑顔を意識して過ごす。マスクの下でも口角を上げて笑顔をつくる |
・積極的に笑い声を出して笑う | とにかく笑うことを意識する。笑うときに大きな声を出して笑うことで自然な笑いへ変わる |
・大勢で運動やゲームを楽しむ | 多くの人が集まって一緒に運動やゲームを楽しむことで、自然に笑いが生まれやすく、笑顔になれる時間が増える |
・目標に向かって努力して達成する | 目標を立ててそれに向かって努力し続けて達成したときには自然と笑顔になれる |
・スポーツをする | スポーツをした後の達成感や身体を動かす爽快感など、快の感情が生まれやすい |
・人と会って笑顔で接する | 人と笑顔で接することで、相手から微笑みかけられる機会も増える |
まとめ
毎日生活していくうえでストレスを完全に避けることは困難です。ストレスがかかったときに気持ちが軽くなる自分なりの手段を見つけたり、免疫機能を整えて身体や心や脳を守る「笑い」の習慣を取り入れてみませんか。日常的に「笑い」の習慣を取り入れるにはさまざまなことを「面白い」と感じられる心のゆとりや、人とコミュニケーションをとる経験も大切です。マスクの下でも常に笑顔をつくり、「笑い」に包まれた毎日で認知機能の低下を予防しましょう。
1)J. Miyanohara et al. TRPM2 channel aggravates CNS inflammation and cognitive impairment via activation of microglia in chronic cerebral hypoperfusion. J Neurosci. 38(14), 3520-3533. (2018)
2)伊丹仁朗,昇幹夫,手嶋秀毅 笑いと免疫機能 心身医学34(7),565-571.(1994)