交通騒音の多い道路の近くに住むと血圧が上昇?
2023年04月18日
交通騒音の激しい道路の近くに住んでいる人は、高血圧の発症リスクが高いことが報告された。騒音に大気汚染の影響が加わると、そのリスクはさらに高くなるという。北京大学(中国)のJing Huang氏らの研究の結果であり、詳細は「JACC.Advances」3月発行号に掲載された。同氏はジャーナル発のリリースの中で、「交通騒音と高血圧リスクとの関連性が、大気汚染を調整した後でも強固であったことにやや驚いた」と述べている。
交通騒音が血圧に及ぼす影響を調べるためHuang氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」の24万人以上のデータを利用した前向き研究を行った。解析対象者は40~69歳で、高血圧の既往のある人は除外されている。交通騒音は、欧州で用いられている標準的な評価指標に基づいて推定した。
中央値8.1年の追跡で、2万1,140人が高血圧を発症。解析結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、民族、喫煙・飲酒・運動習慣、HbA1c、HDL-C、中性脂肪、塩分摂取量、睡眠時間、教育歴、経済状況、居住地域、居住期間、難聴、タウンゼント剥奪指数など)を調整後、24時間の平均的な交通騒音の音量が10デシベル高いごとに、高血圧の発症リスクが7%有意に高いという関連のあることが明らかになった〔ハザード比(HR)1.07(95%信頼区間1.02~1.13)〕。調整因子に、大気汚染の影響(PM2.5または二酸化窒素レベル)を追加してもこの関連は有意だった〔いずれもHR1.06(同1.00~1.12)〕。
交通騒音に大気汚染が加わった場合には、高血圧発症リスクがより高くなることも分かった。例えば、交通騒音が55デシベル以下でPM2.5が9.9μg/m3以下を基準とすると、PM2.5レベルが同じなら交通騒音が65デシベル超でも高血圧発症HRは1.02(95%信頼区間0.85~1.23)で有意なリスク上昇は見られなかった。それに対して、PM2.5レベルが10.6μg/m3超で交通騒音が65デシベル超の場合は、HR1.22(1.06~1.40)と有意なリスク上昇が認められた。
Huang氏は、「われわれの研究結果は、交通騒音の悪影響を抑制するという公衆衛生対策を推し進めることの十分な根拠となり得る。その対策には、現状よりも厳格な基準の騒音規制ガイドラインの施行、道路計画の改善、より静かな車両を作り出すための先進技術への投資などが含まれるだろう」と話している。
本論文の付随論評を寄せている、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のJiandong Zhang氏は、「この研究は、心血管の健康状態を向上させるためには、個人レベルと社会レベルの双方で、交通騒音と大気汚染への対策を講じる必要のあることを示す、質の高いエビデンスと言える」と評している。なお、研究グループでは現在、交通騒音が血圧にどのような影響を及ぼすのかをより詳細に把握するためのフィールド調査を行っている。(HealthDayNews 2023年3月23日)
https://consumer.healthday.com/noise-2659612966.html
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacadv.2023.100262
Editorial
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacadv.2023.100266
Press Release
https://www.acc.org/About-ACC/Press-Releases/2023/03/22/18/46/Road-Noise-Makes-Your-Blood-Pressure-Rise-Literally