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認知症予防コラム

血液脳関門とは?脳の血管を健康に保って認知機能低下を予防しよう!

2022年11月18日

血液脳関門は、脳の老化やアルツハイマー病をはじめとする認知症の発症に深くかかわる脳の器官です。今回は血液脳関門について解説しています。血液脳関門の維持は認知機能低下の予防につながります。血液脳関門を維持する方法も紹介しているので、参考にしてください。

血液脳関門とは

血液脳関門(blood brain barrier;BBB)は、脳の血管と脳の組織との物質の行き来を制限する関所の役割を果たしている器官です。関門というと開閉する門をイメージする人もいると思いますが、脳の毛細血管の内壁を覆っている内皮細胞でできています。

血液脳関門のはたらき

体の血管の内壁も内皮細胞に覆われていますが、内皮細胞と内皮細胞にはすき間があります。そのすき間を通って血管と組織の物質が自由に行き来できるようになっています。対して、脳の血管の内壁は内皮細胞で密に覆われており、すき間がありません。脳では、内皮細胞である血液脳関門を介して、脳と血管の物質の行き来が管理されています。

血液脳関門は「脳に必要な酸素や栄養素を血管から送り届ける」輸送機能、「脳の中の不要な物質を血管に出す」排出機能、「血管から有害物質が脳に入るのを防ぐ」バリア機能で、脳の中の環境を保っています。

血管から血液脳関門を通って脳へ通過できるのは、脳の活動源となるブドウ糖やアミノ酸などの分子の小さな物質です。薬のような分子の大きな物質は血液脳関門を通過することができません。そのため、脳に良い作用があるとわかっている薬でも脳まで届けるのは難しく、脳内に届く薬の研究が多く行われているのです。

血管と脳との物質の行き来を厳格に取り締まっている血液脳関門ですが、外部環境や病気による影響を受けやすいことが知られています。

血液脳関門が影響を受ける要因

ストレス、加齢、アルツハイマー病のリスク遺伝子であるAPOE4(アポリポタンパク質E4)などが血液脳関門に影響を与える要因となります。

国立精神・神経医療研究センターで行われた研究において、マウスに慢性拘束ストレスを与えると、部の脳領域(海馬と扁桃体)で、血管の物質透過性が増大していることが見出されています1

通常ならば、脳の中には入らないタンパク質が脳内へ侵入すると、脳の炎症や異常な神経活動、認知機能の低下などが引き起こされると言われています。

また、2020年にはA.Montagneらが、APOE4を持っていると、脳の記憶、感情、行動をつかさどる海馬と内側側頭葉の血液脳関門が破壊されると報告しました2)。APOE4を保有している人は、アルツハイマー病の原因物質といわれるアミロイドβやタウの蓄積とは関係なく、認知症を発症する以前から血液脳関門が破壊され、認知機能が低下している人は破壊がより重度であることを明らかにしたのです。

国立精神・神経医療研究センターで行われた研究において、マウスに慢性拘束ストレスを与えると、一部の脳領域(海馬と扁桃体)で、血管の物質透過性が増大していることが見出されています。

通常ならば、脳の中には入らないタンパク質が脳内へ侵入すると、脳の炎症や異常な神経活動、認知機能の低下などが引き起こされると言われています。

また、2020年にはA.Montagneらが、APOE4を持っていると、脳の記憶、感情、行動をつかさどる海馬と内側側頭葉の血液脳関門が破壊されると報告しました。APOE4を保有している人は、アルツハイマー病の原因物質といわれるアミロイドβやタウの蓄積とは関係なく、認知症を発症する以前から血液脳関門が破壊され、認知機能が低下している人は破壊がより重度であることを明らかにしたのです。

脳血液関門を良好に保つ方法

血液脳関門はストレスや加齢、APOE4によって損傷を受けます。血液脳関門の機能を良好に保つためには、ストレスを避けるほか、脳の老化を予防する生活が大切です。

脳の老化を予防する生活

脳の老化を防ぐ方法として、次の方法が挙げられます。

  • 過剰な脂質・ブドウ糖・炭水化物の摂取を避ける
  • 血圧・血糖値・コレステロール値を適切に保つ
  • 飲酒を控える
  • 禁煙
  • 定期的な運動
  • 体重コントロール
  • 質の高い睡眠
  • バランスのとれた食事

これらの脳の老化を防ぐ方法と血液脳関門との関与も報告されています。

  • 酸化ストレスの発生

過剰な脂質や糖質の摂取や肥満、糖尿病・高脂血症・高血圧などの病気は酸化ストレスを発生させ、血液脳関門の損傷を招きやすいといわれています。

  • 大量のアルコール、ニコチン

アルコールやタバコのニコチンは血液脳関門を通過する物質です。大量のアルコールは血液脳関門の機能を低下させ、喫煙習慣は認知機能の低下をもたらすと言われています。

  • 体内時計

質の高い睡眠をとるためには、1日24時間の周期に合わせて睡眠・覚醒のリズムやホルモン分泌などの体内環境を変化させている体内時計を整えることが不可欠です。血液脳関門の維持に体内時計が重要であることも報告されました。

体内時計のリズムによって夜に分泌されるメラトニンは、血液脳関門を通過して酸化ストレスによる傷害から脳を守るといわれています。メラトニンの分泌を低下させる寝る前のスマホやパソコンは控えましょう。決まった時間に寝起きし、日中に日を浴びて活動する体内時計を整える生活が大切です。

血液脳関門を維持する成分

血液脳関門の維持にはたらくといわれているビタミンCなどの成分を紹介します。ビタミンCなどの摂取

ビタミンCを豊富に含む食品の摂取により、APOE4を保有する高齢女性の認知症リスクをが低下することが研究報告により示唆されています。

そのほか、マグネシウム、ビタミンB1(チアミン)や、ブロッコリー・キャベツに含まれるスルフォラファン 、ブドウの皮や種・ピーナッツの薄皮に含まれるレスベラトロール、カフェインの血液脳関門を維持する作用も報告されています。

血液脳関門を維持する生活で認知機能の低下を予防しましょう

血液脳関門のはたらきによって脳内の環境は保たれています。しかし、ストレスや加齢、一部の遺伝子の影響によって機能が低下すると、脳内に有害物質のタンパク質などが入り込み、認知機能の低下を引き起こすと言われています。

「ストレスを避ける」「脂質や糖質を抑え、ビタミンやミネラルを含んだバランスの良い食事を摂る」「体内時計を整える」など、血液脳関門の維持に良い生活を取り入れて認知機能の低下を予防しましょう。血液脳関門の維持にはたらく成分は多数報告がありますが、摂りすぎはかえって健康を損ないます。過剰摂取には注意してください。


1)H. Matsuno et al. Association between vascular endothelial growth factor-mediated blood-brain barrier dysfunction and stress-induced depression. Mol Psychiatry 2022 May 26. doi: 10.1038/s41380-022-01618-3

2) A. Montagneet al. APOE4 leads to blood-brain barrier dysfunction predicting cognitive decline. Nature 581; 71–76 (2020)

3)R. Nakazato et al. Disruption of Bmal1 Impairs Blood–Brain Barrier Integrity via Pericyte Dysfunction. J Neurosci 37; 10052-10062 (2017)

4)Noguchi-Shinohara,et al.Higher Blood Vitamin C Levels are Associated with Reduction of Apolipoprotein E E4-related Risks of Cognitive Decline in Women. Alzheimer Dis63;1289-1297,(2018)