検査できる病院を探す

認知症予防コラム

長寿を望まないと短命になる?–日本人4万人、25年の縦断解析

2022年06月20日

 長生きを望まない人は実際に短命になってしまう可能性を示すデータが報告された。日本人約4万人を四半世紀にわたり追跡した結果であり、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の辻一郎氏らによる論文が「Journal of Epidemiology」に5月5日掲載された。

 この研究は、地域住民対象の疫学研究である「宮城県コホート研究」のデータを用いて行われた。宮城県コホート研究では、1990年に同県内の14市町村に住む40~64歳の住民全員5万1,921人を登録して、その後の健康状態を長期間追跡している。ベースライン時点で行ったアンケートで、「寿命についてどのように考えていますか」という質問に対して、「長いほどよい」「平均寿命ぐらいが良い」「平均寿命より短くてもよい」という回答から三者択一で選んでもらっていた。今回の研究では、その回答と実際の死亡リスクとの関連を調査した。

 転居のため追跡不能となった人や、ベースライン時に脳卒中、心筋梗塞、がんの既往のあった人、アンケートに回答しなかった人などを除外し、最終的に3万9,902人の参加者(男性48.7%)を解析対象とした。そのうち33.1%が「長いほどよい」を選択し、「平均寿命程度」は54.7%、「短くてもよい」は12.2%だった。

 「短くてもよい」群は「長いほどよい」群に比較し、若年で、女性が多く、教育歴が長いという有意差が見られた。また、生活習慣に関しても、「短くてもよい」群は男女ともに、喫煙者率が高く、睡眠時間が短く、ウォーキングや朝食を食べる習慣が少ないという点で有意差があり、女性では習慣的飲酒者の割合も高かった。

 1990~2015年の25年間、87万688人年の追跡で、8,998人(22.6%)が死亡した。年齢、性別、婚姻状況、教育歴を調整後、「長いほどよい」群に比較し「短くてもよい」群の全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクは有意に高いことが明らかになった〔ハザード比(HR)1.12(95%信頼区間1.04~1.21)〕。追跡開始から最初の2年以内の死亡を除外した解析の結果もほぼ同様であり、ベースライン時点の健康状態が、希望寿命と死亡リスクとの関連に影響を及ぼしている可能性は低いと考えられた。

 死因別に検討すると、がん死〔HR1.14(同1.00~1.29)〕と自殺〔HR2.15(同1.37~3.38)〕による死亡リスクは、全死亡での検討結果と同様、「長いほどよい」群に比較し「短くてもよい」群の方が有意に高かった。一方、心血管死、肺炎による死亡、事故死については有意なリスク差が見られなかった。

 全死亡のリスクを、年齢、性別、婚姻状況、教育歴で層別化してサブグループ解析を行ったところ、性別を除き交互作用は全て非有意であり、結果に一貫性が認められた。性別に関しては、女性において全死亡リスクとの関連が非有意となった〔「長いほどよい」群に比較し「短くてもよい」群がHR1.04(同0.93~1.16)、交互作用P=0.049〕。

 媒介分析の結果、希望寿命と死亡リスクの関連のうち30.4%が生活習慣で説明できることが分かった。生活習慣をより細かく分けて検討すると、喫煙が両者の関連の17.4%を媒介し、その他、BMIが4.4%、歩行時間が4.1%、飲酒が3.8%、朝食欠食が3.8%と計算された。

 著者らによると、希望寿命と死亡リスクとの関連を前向きに検討した研究はこれまでに1件のみであり、その研究の対象は高齢者のみでサンプル数が少なく、また追跡期間が限られていて交絡因子もあまり考慮されていなかったという。それに対して本研究は、より多数の若年者層を長期間追跡し、多くの交絡因子を調整している点が特徴とのことだ。

 結論としては、「国内の一般住民対象前向きコホート研究から、希望寿命と全死亡リスクとの有意な関連が示された。この関連は、不健康な生活習慣によってある程度は説明可能だが、他の要因は不明であり、より詳細な研究が必要とされる」と述べられている。(HealthDay News 2022年6月20日)

Abstract/Full Text

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20210493/_article

Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.

Photo Credit: Adobe Stock