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認知症予防コラム

親を認知症にさせないために 《子世代の心がけ》

2021年04月13日

1世紀以上を生き抜いたという意味のセンテナリアン(百寿者)が年々増加しているのをご存知でしょうか。厚労省の調べでは、百寿者の数は1963年に全国で153人でしたが、1981年に千人を超え、1998年には1万人を超えました。その後2012年に5万人を超え、2020年は8万人を超えて80,450人であったと発表されています。

では百寿者の方とは一体どのような健康状態なのでしょうか。調査では、8割の方には何らかの機能低下があり、認知症や寝たきりの状態でしたが、残る2割の方は認知症がなく自立した生活を送ることができています。100歳を超えてもなお認知症を発症しない方がこれだけいることは、勇気づけられます。

一方で、平成29年度高齢者白書によると、2012年に認知症患者数が約460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが2025年には730万人、高齢者人口の20%が認知症になるという推計があります。

アルツハイマー型認知症の平均発症年齢は75歳頃だと言われていますので、親には認知症を発症しない百寿者の方々のように、できるだけ長く健康あってほしいものです。 今はまだ若々しく健康に生活している親も、10年後はどうなっているでしょうか。親が70歳を過ぎた頃から、子世代がサポートできることがあります。認知症は予防や発症を遅らせることができますので、親が認知症になった時に ”対策を講じておけばよかった” と後悔しないよう、親を認知症にさせないためのヒントを紹介していきます。

子世代の心がけ

  • 「もう歳なんだよ」と言わない
  • 親が20代の頃に好きだった環境を、再現してあげる
  • 父親には役割を与え、母親にはお化粧をする
  • 父親には赤い色、母親にはピンク色を取り入れる

「もう歳なんだよ」と言わない

「親に”もう歳なんだよ”と言ってはいけない」と80歳を超えた医師が、私たち子世代に向けてメッセージを伝えています。
親も歳をとったと感じることがあるでしょう。親自身も身体の衰えを歳のせいだと言うかもしれません。しかし心のなかでは「歳をとった」とは感じていないようです。「もっと人生を楽しみたい」と、その思いは私たち子世代の心と何ら変わりがないとのこと。
70代では分からなかったことも、80歳になって理解できたことがあると言い、常に経験を重ね、感性を磨き続けています。そんな心持ちでいる親に対して「もう歳なんだよ」という言葉は、親の進歩を妨げることになります。いくつになっても可能性は広げられますので、危険を伴うこと以外は、子世代が親の発展を阻害することのないよう配慮したいものです。
好奇心のアンテナを張って、心がときめくものに取り組む姿勢を「さすがだね」「人生を楽しんでいて尊敬する」といった言葉で、親自身のモチベーションを高められるように応援してあげてください。

親が20代の頃に好きだった環境を、再現してあげる

米国での興味深い研究があります。80歳以上の50人を対象に、その方々が20代の頃の環境を忠実に再現した場所をつくり、そこで一つの共同体として50日間生活してもらいました。その効果を皮膚圧(肌のハリ)で測定したところ、30%以上の方が20代の皮膚圧に戻ったそうです。3人に1人の高齢者が60歳も肌を若返らせたことになります。
昔の懐かしい思い出から、当時の状況や楽しかった経験をよみがえらせることで脳を活性化させる回想法というリハビリがあります。昔を思い出すことで脳血流が良くなったり、当時の話をすることで心の安定が得られるといった効果が期待できます。
あなたの親が20代の頃に熱中したものは何でしょうか。そのグッズを用意し、若い頃によく聴いた音楽を流すことで、脳の若返りを図ることができます。

父親には役割を与え、母親にはお化粧をする

人は誰かと一緒に何かを成し遂げたり、人の視線を認識することで脳が刺激されます。
男性は期待されたり、責任を感じることでやる気につながることがありますので、地域のボランティアなど、自分に期待される仕事や、責任を伴うことで活動的になります。
女性はお化粧やおしゃれをすることで気分が高揚します。おめかしをして出かける機会があると、人の視線を感じることができます。

父親には赤い色、母親にはピンク色を取り入れる

加齢により男性ホルモンや女性ホルモンの分泌量が減ると、身体的に大きな影響を及ぼします。例えば、骨の新陳代謝が悪くなって骨折しやすくなる、高脂血症の発症リスクが増加して動脈硬化へ進展しやすくなる、脳梗塞や心筋梗塞などへと発展するリスクが高くなることがあげられます。
特に男性ホルモンは、低下すると筋力の低下につながります。女性ホルモンが低下すると、自律神経失調症や骨粗しょう症を引き起こすことがあります。
しかし、視覚からホルモンの分泌を促すことができるそうです。ピンク色を基調とした部屋で1ヶ月間生活した女性は、水色の部屋で生活した女性よりも、肌年齢が若返ったという実験結果があります。
女性ホルモンは母性のホルモンであり、ピンク色で分泌量が増えます。一方男性ホルモンは、闘争心を高める作用のある赤色を見ることで分泌量が増えることが報告されています。
父親には赤いパンツを、母親にはピンクの下着を贈ると、外見の若々しさを保てるかもしれません。

子世代が関わることが大切

孤独を感じることが認知症には大きなリスクになります。赤色のパンツやピンク色の下着を贈ることで笑い合い、冗談を言うことで親は心が温まり、気遣ってもらっていることが伝わります。そして、それを思い出し笑いする度に脳内の血流が増加します。
親に何かをしてあげたいと思う気持ちや行動は、そのあたたかい心が親に伝わります。親子のつながりを感じることで、老いていく不安や寂しさを和らげることができます。そしてその喜びが、認知症の予防につながります。

私たち子世代が関わることで、親の脳に刺激を与え、認知症にならないレールを敷いてあげることができるかもしれません。親を認知症にさせない予防習慣、私たちの心遣いで変わってくるかもしれません。

参考文献: