認知症予防習慣 ―ワクワク習慣―
2021年02月17日
40代から始まる感情の老化
考えているとワクワクすることはありますか?
好奇心やときめき、意欲を感じるのは、「前頭葉」と呼ばれる部分で、ちょうどおでこの辺りに位置しています。前頭葉は人間らしく生きるために大切な役割を担っていて、主に感情や欲求のコントロール、思考・創造・判断をします。しかしこの前頭葉、脳の老化が始まるときに最初に変化が表れます。例えば、面白いと思うことが少なくなった、心を揺さぶられることがない、やる気が出ない、無関心になりどうでもよいと感じることがある、といった感情の老化が始まります。これが40代頃から始まるというのですから、果たして自分は大丈夫かなと気になります。
脳のハリが感情のハリに表れる
感情の老化はどんどん進行していきます。これを阻止するには、自発的な感情であるワクワクする気持ちや好奇心を育むことです。楽しいと感じることや、ときめくことがあると、快感ややる気を感じさせるドーパミンが分泌されます。ドーパミンはまたやりたい、もっと知りたいという感情を誘発し、これによって達成感を味わうと好循環が生まれて、ワクワクや好奇心はどんどん育まれていきます。
何かに夢中になっている人が若々しくイキイキして見えるのは、その人のワクワクする気持ちから生じているのかもしれません。
知的好奇心の強い人は、10年後も知識力を維持
「好奇心が強く、新しい経験に挑戦することが好な人」の知的な能力との関係を調査した報告があります。40~82歳の対象者を10年間にわたって追跡した結果、年齢に関係なく「好奇心が強く、新しい経験に挑戦することが好きな人」は、そうでない人と比べると知識力や情報処理のスピードが高い傾向にありました。
さらに特筆すべきは、高齢の人ほど「好奇心が強く、新しい経験に挑戦する」心の持ち方が、その後の10年間の知的な能力の変化に好ましい影響を与えていたのです。75歳の方が85歳になった時も、好奇心が強い人は知識力の高さを維持していました。しかし、そうでない人は75歳時点の知識力も低かったのですが、85歳になった時では顕著に得点が低下していました。
知的好奇心の強い人は認知機能が低下しにくいということですが、好奇心のままに好きなことを楽しむと認知症予防になるとは、こんなに嬉しいことはありません。
ワクワクできることはありますか?まだ見つかっていないようでしたら、アンテナを伸ばしてみましょう。
忙しい毎日を送る働き盛り世代は、何もしない時間をつくって心身にゆとりをつくってあげると、新しい発見があるかもしれません。慌ただしい生活の中で作業に追われていては、知的好奇心は生まれにくいものです。
シニア世代は、家族や近隣の方、新聞やテレビで見たことを真似してみるのはいかがでしょうか。やってみたら案外楽しいかもしれません。自分で高くしているハードルはありませんか?視野を広げるきっかけは、軽い気持ちで始めることかもしれません。
積極的な気持ち、前向きな気持ちで脳も気持ちも若返ります。ワクワク習慣、生涯続けられたら素敵ですね。
参考文献:
- 西田 裕紀子, 丹下 智香子, ほか 中高年者の開放性が知能の経時変化に及ぼす影響, 発達心理学研究, 2012, 23 巻, 3 号, p. 276-286