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認知症予防コラム

認知症予防習慣 ―睡眠習慣―

2021年01月28日

睡眠時間が6時間未満であるという人は、男性で38%、女性で41%にのぼることが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査2019」で分かりました。睡眠時間が確保できない理由として、男性は仕事、女性は家事・育児があげられています。しかし同時に、携帯電話・メール・ゲームによって睡眠が妨げられている人が多いことも分かりました。これらの人の多くは日中の眠気を訴えています。

生活スタイルが夜型化して睡眠時間が減少することは、認知症リスクになります。ではなぜ睡眠時間の確保が大切なのでしょうか。

睡眠不足が生活習慣病の一因に

睡眠不足になると、コルチゾール(目が覚める時に活発になる覚醒準備ホルモン)の分泌が高まり、インスリン抵抗性が増大します。さらに、グレリン(空腹感亢進ホルモン)が増加し、レプチン(食欲抑制ホルモン)が低下してくるため、食欲が増進して体重増加(肥満)を招きます。加えて、睡眠不足による眠気から日中の活動量が低下すると、エネルギー消費が少なくなります。 睡眠不足が肥満を呼び、生活習慣病へとつながると、認知症へは最短ルートです。

脳の修復・回復ができるのは睡眠だけ

脳はエネルギーを大量に消費する、非常に繊細で脆弱な臓器につき、連続運転には弱いのです。起床から16時間以上連続して覚醒していると、脳機能が低下し、酒気帯び運転と同じ状態になります。睡眠は脳を休息させるだけでなく、脳機能を修復・回復します。メラトニン(睡眠準備、活性酸素の中和、抗加齢作用のある身体を修復するホルモン)、成長ホルモン(組織の損傷を修復し、疲労を回復するホルモン)、コルチゾール(日中の活動に向けて体調を整えるホルモン)他、多くのホルモンが分泌されて身体のメンテナンスが行われます。 睡眠は、脳と身体を創り育て、脳を守り、より良く活動させます。睡眠が障害されると脳機能が低下し、これが長期間にわたると認知症リスクが高まります。

ノンレム睡眠時に老廃物が排除される

脳の重さは体重の2%にも関わらず、消費エネルギーは安静時でも身体全体の20%にもなります。そしてエネルギー消費と同時に、脳内には有害な老廃物が多量に生じます。脳機能を保つためには、これらの老廃物を除去しなくてはなりません。 脳内の老廃物は、脳も身体も休止しているノンレム睡眠の時に脳から排除されるようにできています。深い睡眠状態に特有の、ゆっくりした心拍数のときに、脳の老廃物は血流にのって排除されます。しかし、深い眠りに到達できないと、老廃物はきちんと排除されず、脳内に蓄積されていきます。

睡眠時間の目安は7時間

必要な睡眠時間は個人差があるように感じますが、7時間睡眠をすすめる研究報告が多く目につきます。長生きや認知症リスクの低下、自然免疫力を高める効果が期待できます。また先に述べた老廃物の除去にも、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し、7時間以上かかると言われています。


睡眠はきちんととれていますか?
特に30代から50代の若い時期の睡眠習慣を見直すことは重要です。脳の老廃物を毎日排除して、蓄積させない状態をつくるためです。これは、脳内に老廃物が蓄積されておこるMCIや認知症の最初の予防策になります。

MCIスクリーニング検査では、免疫力を知ることができます。血液中のタンパク質の量を測定することで、脳の老廃物を排除する力があるか、免疫力があるかを数値で確認することができます。数値の低下が気になる方は、7時間睡眠を心がけて、免疫力を高めましょう。

参考文献:

  • 宮崎 総一郎 , 北村 拓朗, 野田 明子, 睡眠からアプローチする認知症予防, 日本耳鼻咽喉科学会会報, 2019, 122 巻, 12 号, 
  • University of Rochester Medical Center. Not all sleep is equal when it comes to cleaning the brain. 2019
  • Max Hirshkowitz, et al. National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations. 2015 Sleep Health.