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認知症予防コラム

趣味で認知機能低下を抑止~趣味を見つけるヒント~

2020年09月22日

夢中になれる趣味がある人は、いくつになっても若々しいものです。楽しめることがあると、目が輝いて表情もイキイキとします。身体を自由に動かせる今のうちから趣味を見つけて、長く楽しんでみてはいかがですか。

趣味が仕事の効率を上げる

趣味から享受する効果は数多くあります。リラクゼーション効果、ストレス発散、同じ趣味を持つ人とのつながり、心から楽しむ体験、それによって視野が広がるなど、趣味があると確実に人生が豊かになります。それだけでなく、仕事への良い影響も報告されています。サンフランシスコ州立大学の研究では、編み物、料理、絵画、写真、ガーデニングなどの創造的な活動をすることによって仕事の効率が15~30%上がったという報告がありました。

成人期の趣味とのかかわり方が高齢期に影響

趣味がもたらす効果はその時だけではなく、高齢になった時に認知機能が低下しにくいことも分かりました。70~80代の成人294名が幼少期、成人期、高齢期に行った情報収集活動の量から、彼らの認知能力を調査した結果を報告しています。生涯を通してクリエイティブまたは知的な娯楽に多く興じた人は、脳を使う活動に参加する機会が少なかった人に比べて、高齢期の認知機能低下率が32%低かったようです。とりわけ若い頃のメンタル的な活動量は、高齢期の記憶力保持に強く関連していたようです(神経学専門誌『Neurology』掲載シカゴ大学)。

成人期(20~60歳前後)の活動が高齢期(65歳以上)の認知機能に影響することを受けて、自分にあった趣味を見つけるヒントをご紹介します。
「楽しいからどうしてもやってしまう」のが趣味であり、意気込んで調査をせずとも、案外身近なところで発見できるかもしれません。読書や音楽鑑賞も立派な趣味のひとつです。

趣味を見つけるヒント

ヒント① 子どもの頃やってみたかったこと

「ミュージシャンになりたかった」「画家になりたかった」「お花屋さんになりたかった」という夢があったなら、ギター、デッサンや油彩、フラワーアレンジメントを始めてはいかがでしょうか。

ヒント② 懐かしい記憶をたどる

「小さい頃はよく折り紙を折っていたな」「おじいちゃんが畑をやっていたな」「マジシャンの手品を見て驚いたな」という記憶があれば、少し難しいユニット折り紙に挑戦、家庭菜園でハーブや野菜を育てる、トランプのトリックを練習するなども楽しいでしょう。

ヒント③ 友達や家族と一緒にやってみる

友達に誘われたら試しに一度参加してみる、家族がやっていることを真似してみる、というのも良いきっかけになります。

ヒント④ 趣味一覧をチェックしてみる

インターネットで「趣味一覧」と検索すると、たくさんの候補があがってきます。スポーツをしてみたい方、インドアでできることを探したい方、お金を稼げることをしてみたい、何かを作りたい、特別な道具は使いたくない等、幅広い視点でリストになって紹介されています。

ワクワクしているときに脳が最も活性化します

夢中になって楽しんでいるとき、ワクワクしているときに、脳は最も活性化しています。しかし、始めたからには続けなくてはいけないという義務感から「嫌だな」「面倒だな」と感じるようになってしまうと、脳にとっては良い影響にはならず、むしろ逆効果です。
そう感じるようであれば、少し距離を置いたり、思い切ってやめてしまっても良いのです。「やったことがある」というひとつの経験になりますし、候補は他に数多くありますので、どんどん別なことにチャレンジした方が良いでしょう。そうしているうちに、きっと合うものが見つかるはずです。

趣味で健康寿命を延ばそう

高齢になってからも趣味や生きがいがあると、健康寿命が延びるという研究結果があります。日常生活動作(食事・トイレ・入浴などの日常生活を送るために必要な動作)や、手段的日常生活動作(買い物・炊事洗濯・金銭管理などのより複雑で高次な動作)の低下を防ぐことが、日本疫学会誌に報告されています。趣味があると、身体的活動量が多くなり、自立するために必要な神経回路網や筋骨格能力などが強化されるとのことです。

この先の長い人生を豊かに、健康のまま過ごせるよう、夢中になれる趣味を探す旅に出てみませんか。

参考:

  • 株式会社MCBI発行 認知症予防マニュアル
    (医療法人社団創知会メモリークリニックお茶の水理事長 朝田隆先生監修)
  • Women’sHealth
  • inc.com
  • Kimiko Tomioka, Norio Kurumatani, and Hiroshi Hosoi “Relationship of Having Hobbies and a Purpose in Life With Mortality, Activities of Daily Living, and Instrumental Activities of Daily Living Among Community-Dwelling Elderly Adults.” Journal of Epidemiology,2016