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認知症予防コラム

運動で増える脳の神経細胞(40・50・60代、65歳以上)

2020年07月31日

「運動が脳に良い」とはよく耳にしますが、なぜそのように言われるのでしょうか。運動によって脳で起こる作用を2つご紹介します。

これから紹介することは、年齢に関係なく当てはまりますので、いくつになっても脳を変化・成長させられることが分かります。始める時期に遅いことはありません。運動が脳に与える好影響を知って、体を動かすことを始めてみませんか。

運動をすると神経細胞が生み出される

運動をするときに伸縮する筋肉から、アイリシンというホルモンが分泌されます。アイリシンは脂肪の燃焼を促し、血糖値を改善させることで知られるホルモンですが、これが脳でも影響を及ぼしています。血流に乗って脳に運ばれると、脳の栄養と呼ばれるBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促してくれます。BDNFとは海馬に多く存在するタンパク質で、神経細胞の新生や成長、維持、再生を促します。またBDNFが増えることによって、シナプスの形成が促され、記憶力や認知機能も向上します。
つまり、運動によって神経細胞が増えるとは、アイリシンの影響によって増加したBDNFが、神経細胞を生成するものだったのです。アイリシンは脂肪の燃焼も促しますので、頭にも身体にも効果が期待できるというわけです。

有酸素運動が海馬の容積を増やす

有酸素運動とは、持続的に全身に酸素を取り入れる運動で、全身の血流が良くなり、不安や抑うつ感を軽減する効果があります。
脳の血流が良くなるだけでも良い影響がありそうですが、この有酸素運動によって、海馬の容積が2%増加することが、報告されています。論文を執筆した教授は、「加齢に伴う海馬の委縮は必然的だが、適度な運動を1年間続けるだけで海馬のサイズを大きくすることは可能だ。脳はこの段階でもまだ変わることができる。」と言います。この研究の対象になったのは、55~80歳の座りがちの生活を送る健常の男女120人で、実施した有酸素運動とは、1回40分のウォーキングを週に3日行ったのみ。(米ピッツバーグ大学カーク・エリクソン教授)
一般的に40代になると海馬が小さくなる傾向にあるといわれます。この程度の有酸素運動で海馬が大きくなるのであれば、実施したくなります。

運動を行う目標時間・頻度は?

軽く汗をかく強度で週に3~4回実施します。40・50代は1回40分以上、60代以上は1回20分以上行うと効果的です。運動の習慣のない高齢の方は10分程度のウォーキングでも脳の認知機能の向上には効果があるので、少しずつでも始められます。

有酸素運動の例

ウォーキング、ランニング、エアロビクス、サイクリング、スポーツ(テニス、バレーボール、ゴルフ、水泳など)、ダンス(ジャズ、社交ダンス、バレエなど)

運動には数多くのメリットがあります。基礎代謝アップ、心肺機能の向上、血圧・血糖値の安定、脂肪燃焼、うつ病改善。これに加えて神経細胞が新生されたり、海馬の容積が増えるという脳への効果があるのであれば、身体の変化を確かめてみたくなりませんか。

参考:

  • 株式会社MCBI発行 認知症予防マニュアル 田平武監修
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット
  • Japanese Physical Therapy Associtation 理学療法学 第42巻 第4号 認知症予防を目的とした運動の効果 島田裕之
  • Cholinergic activation of hippocampal neural stem cells in aged dentate gyrus Hippocampus, Published Online: 6 Jan 2010 東京大学大学院新領域創成科学研究科
  • APF BB News