デュアルタスクで脳を刺激(65歳以上)
2020年07月27日
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高齢になると一つのことしかできなくなる
2つの行動を同時に行うことを「デュアルタスク」といいます。体を動かすこと、頭を使うことにはそれぞれに認知症の予防効果がありますが、これを組み合わせて頭を使いながら体を動かす行為は、脳を刺激して活性化させる高い効果があります。
高齢になると、複数の行動を同時にこなすことが難しくなります。話をしながら歩いていると会話に夢中になって立ち止まったり、食事中なら箸が止まったり・・・。若い頃は意識せずに行っていたことも、加齢により脳の働きが変化するにつれて、自然と1つのことしかできなくなってきます。
実は、日常生活の中でデュアルタスクになっている行動はいくつもあります。例えば、電話をしながらメモを取る、洗濯物を干しながら献立を考える、料理を作りながらテレビを見るなど、無意識のうちに2つの行動を同時に行っていることは意外に多くあります。
意識することで脳トレになる
意識せずに行っていたデュアルタスクも、意識して脳への刺激を強めることで、効果が高まります。例えば、ウォーキングするときにしりとりをしたり、100から3をひいていく暗算をしたり、川柳を考えたり、小鳥のさえずりに留意したりと、その応用は幅広く膨らみます。
デュアルタスクを用いたトレーニング法
少し意識するだけで取り組むこともできますが、確立されたトレーニングもあります。「コグニサイズ」(国立長寿医療センター)、「シナプソロジー」(株式会社ルネサンス)は、いずれも頭を使いながら体を動かすトレーニングで、一人で取り組めるものから、複数名で取り組むものまで、多くのメニューが考案されています。
一人で取り組めるメニュー
コグニステップ(コグニサイズ)
- ステップを踏みながら、1から数を数えていき、「3」の倍数で手をたたきます。
[ステップ]両足で立つ→右足を右側へ出す→出した右足を元に戻す→左足を左側へ出す→出した左足を元に戻す。これをリズムよく繰り返します。 - *ステップが有酸素運動になるため、10分間繰り返します。
すりすりとんとん(シナプソロジー)
- 片手はパーで腿をさすり、もう一方の手はグーで腿をたたく。この動作を両手同時に行う。
- 誰かに「はい」と指示を出してもらい、それに応えて「はい」と言いながら左右の手の動作を入れ替えます。数回やって慣れてきたら刺激を変えます。
- 今度は腿に触れずに(腿から手を離して、触覚の情報をなくして)動作を行います。腿から手を浮かせてさすったりたたいたりしてください。
- この状態で誰かに「はい」と指示を出してもらい、それに応えて「はい」と言いながら左右の手の動作を入れ替えます。数回実施したら終わりにします。
実際にシナプソロジーをクリニックで取り入れている朝田隆先生は、認知機能の低下を防ぐ有効な手段であるといいます。
初めてやること、慣れない行動が脳全体を刺激する
人間の脳はそもそも効果的に働こうとする性質があり、慣れた行動には脳のごく一部しか使われなくなります。逆に、慣れないことをして戸惑うと、これまで使われなかった脳のさまざまな部分が活発に使われ、脳全体が刺激されます。デュアルタスクによる刺激も同様で、慣れてしまっては期待するような効果が得られなくなります。繰り返し練習をして上達することが目的ではなく、上手くできないこと、慣れないことをした時の混乱が、脳の刺激につながるので、できないくらいの方が良い刺激につながります。
毎回変化をもたせて、新鮮に取り組める内容で、日常のデュアルタスクを楽しく設定してみてはいかがでしょうか。新しいタスクを考える時点で、既に脳が活性化されますよ。
引用:
- 株式会社MCBI発行 認知症予防マニュアル
(医療法人社団創知会メモリークリニックお茶の水理事長 朝田隆先生、株式会社ルネサンス常務執行役員 望月美佐緒)
出典:
- 「コグニサイズ」国立長寿医療研究センター