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認知症予防コラム

夜遅い食事が太りやすい理由とは

2023年09月27日

 一般的に「夜遅く食べると太る」ということは知られていますが、最近の研究により、その理由が明らかになりました。この記事では、研究の概要とともに、夜遅く食べると太りやすい理由や、肥満を予防する食事のタイミングについて説明します。単に、夜遅いのではなく、一日の食事時間帯のずれにも要注意です。

 夜遅い時間帯に食事を摂ると太りやすくなるメカニズムが明らかになりつつあります。夜遅く食べると身体に起こる変化や、太りやすくなるメカニズムを研究の概要とともに説明します。さらに、肥満を予防する食事のタイミングについて、研究結果を交えて具体的な時間もお伝えします。夜遅く食べることが多いという方は、食事を摂るタイミングを意識してみませんか。

夜遅い食事は太る原因が明らかに

米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院とハーバード大学医学大学院のFrank Scheer氏らの研究により、夜遅い時間帯に食事を摂ると太りやすくなる理由の一部が明らかにされました。(2022年10月4日)

Scheer氏らの研究は、16人の肥満成人を対象に、朝9時に朝食を食べる生活と、朝9時よりも250分遅い時間に朝食を食べる生活で6日間ずつ過ごしたときに、採血、体温、消費エネルギー量の計測、脂肪組織の生検を行い、比較したものです。

昼食・夕食の間隔や食事内容、就寝・起床時刻は両条件で同じになるように調整され、2つのスケジュールの順序はランダムで実施されています。1つ目の条件での生活後、2つ目の条件での生活までは3週間~12週間の間隔が空けられました。

結果として、夜遅くの食事は肥満をもたらす身体の変化がみられています。

夜遅い食事が太るメカニズム

Scheer氏らの研究結果により、朝食を250分遅く食べる条件では、空腹感の増加、食欲刺激ホルモンの「グレリン」の分泌量増加と食欲を抑制するホルモンの「レプチン」の分泌量減少、消費エネルギー量や深部体温の低下、脂肪組織の分解を抑えるように働く遺伝子発現量の変化などが認められ、早い時間帯に食事を摂ることが肥満リスクを低減すると報告されています。1)

ただし、この研究は、食事を摂る時間帯を遅くした以外の生活パターンの変化がない状況下で実施されており、実際の生活においては、食事時間の変更に伴う睡眠や日中の身体活動量などの変化が起こり、それらも肥満に影響を与える可能性があると考察されています。

また、マウスにおいて、食事のタイミングが概日リズムに逆らった場合、クレアチンの合成とミトコンドリアの活動が低下する結果、体内の熱生産を調節して代謝バランスに関わるUCP1の活性に影響を与え、肥満をもたらす可能性があると、シカゴのNorth Western大学の研究により示唆されています(2022年10月21日)2)。この結果がヒトにそのまま当てはまるとは言い切れませんが、注目できる結果と言えそうです。

このように、夜遅く食べると、太りやすい理由が明らかになりつつあります。

肥満を予防する食事のタイミング

米ニューヨーク大学ランゴーン医療センターによる研究で、1日のなるべく早い時間帯に食事のタイミングを移すことで、体重増加や糖尿病のリスクを軽減できることが示されました。(2023年6月15日)3)

具体的な食事の時間帯については、米ノースウェスタン大学の朝食の時間とインスリン抵抗性を比較した研究により、午前8時半よりも前(目安としては8:15~8:26)に朝食を食べ始めている人は、インスリン抵抗性が低く、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病などのリスクを低減できることが示唆されています。(2021年3月18日)4)5)

朝8時半前には朝食をすませて1日のスタートを

夜遅い時間に食事を摂ると、食欲に関連するホルモンの変化や体内時計の乱れなどが起こり、太りやすいことがわかってきています。肥満を予防するには、なるべく早い時間帯に食事を摂るようにして、食事のタイミングが夜遅くにならないようにすることが大切です。朝8時半までには朝食をすませて、1日のスタートを切りましょう。

参考文献:

1)Nina Vujović et al. Late isocaloric eating increases hunger, decreases energy expenditure, and modifies metabolic pathways in adults with overweight and obesity. Vol3(10)1486-1498(2022)

2) Chelsea Hepler et al. Time-restricted feeding mitigates obesity through adipocyte thermogenesis. Science 378(6617):276-284(2022)

3)Department of Medicine at NYU Langone Study Finds That Eating Meals Earlier Improves Metabolic Health. NYU Langone News
4)Endocrine Society Eating before 8:30 a.m. could reduce risk factors for type 2 diabet. Endcrine Society プレスリリース

5)Marriam Ali et al. Associations between Timing and Duration of Eating and Glucose Metabolism: A Nationally Representative Study in the U.S. Nutrients 15:729 (2023)