玉ねぎとニンニクで動脈硬化を予防 !
2023年02月08日
玉ねぎとニンニクは保存が効き、使い勝手の良い身近な食材ですが、玉ねぎとニンニクには動脈硬化予防や抗酸化作用などさまざまな健康効果があることが報告されています。
コルソ-マルティネス マルタ博士は2007年に玉ねぎとニンニクの生物学的特性についての論文を発表しました。
ニンニクは4000 年以上にわたり食品として使用されるだけでなく、頭痛、咬傷、腸内寄生虫、腫瘍などのさまざまな病気の薬用植物として使用されてきました。 マルタ博士の論文では玉ねぎとニンニクが、 抗菌活性、抗酸化活性、 発癌を抑制する作用、 抗喘息作用などに寄与する可能性があると記述されています。
玉ねぎとニンニクには数多くの健康効果がありますが、どのような有効成分が含まれているのでしょう?
玉ねぎとニンニクに含まれる代表的な成分は硫化アリルです。玉ねぎには抗炎症作用、抗酸化作用に効果的なケルセチンの他に食物繊維やカリウムなど体に有効な成分が含まれていますが、今回は玉ねぎとニンニクに含まれる硫化アリル、玉ねぎに含まれるケルセチンの効果を中心に解説していきます。
目次
ニンニクと玉ねぎに含まれる代表的な成分 【硫化アリル】
ニンニクと玉ねぎなどのネギ属の植物には硫化アリルという成分が含まれています。この硫化アリルは玉ねぎやニンニクに特有のツンとした匂いの元になるものです。また、生ニンニクの辛味も硫化アリルの刺激によるものです。
硫化アリルにはさまざまな種類があり、その代表がアリシンです。 アリシンはニンニクの代表的な成分で、生のニンニク内ではアリインとして存在します。ニンニクを刻んだりして組織の細胞が壊れると、ニンニクが持つアリナーゼという酵素の働きにより、アリインはアリシンに変化してニンニク独特の臭いを発します。玉ねぎを切るとき涙が出ることがありますが、これも硫化アリルが関係しています。硫化アリルには催涙作用があるため、目や鼻に入ると涙や鼻水を分泌させます。
アリシンには強力な殺菌作用があり、サルモネラ菌や病原性のカビ、チフス菌、コレラ菌、寄生虫の駆除などに効果があると言われています。
硫化アリルは消化液の分泌を助けて食欲を増進する作用やビタミンB1の吸収と活性化を促進する作用があると言われています。ビタミンB1の吸収を高めるため疲労回復にも有効です。更に、血液をさらさらにして動脈硬化を予防する作用も報告されています。硫化アリルには血栓を防ぐ作用があることが分かっています。これは 硫化アリルが脂質と結合することで、ビタミンEと同じような抗酸化性を発揮するためと考えられています。
硫化アリルは加熱することで辛味成分が甘味成分に変わってしまうため血液をサラサラにする効果を期待するのであれば、生のまま食べた方が良いといわれています。 しかし生の玉ねぎやニンニクは刺激が強く胃の粘膜を傷つけることがあります。食べ過ぎには十分に注意をしてください。
硫化アリルの効果 まとめ
- 殺菌作用
- 抗酸化作用
- 血液をサラサラにする作用
- 食欲増進作用
- 疲労回復作用
玉ねぎに含まれる動脈硬化を予防する成分 【ケルセチン】
ケルセチンはフラボノイドやポリフェノールの一種で、タマネギに多く含まれている成分です。特に玉ねぎの皮の部分に多く含まれ、ケルセチンが黄色い色素であることから染料として利用されてきた歴史があります。
サンパス・クマール博士は2010年に、伝統的な薬草とその健康効果についての論文で玉ねぎに含まれるケルセチンが多くの慢性疾患の予防に役立つ可能性があると述べています。
では、ケルセチンにはどのような効果があるのでしょうか。
ケルセチンには抗炎症作用、抗酸化作用があり、赤血球が活性酸素によってダメージを受けるのを防ぎ赤血球の働きを活発にさせる効果があります。この効果により血流を改善し、血圧の上昇を防ぐことができると考えられます。また、ケルセチンは赤血球の働きを活発にさせて血液がサラサラと流れる状況をつくり血管の柔軟性を保ちます。そのため動脈硬化の予防に繋がるといわれています。
被験者数が115名と少なめではありますが、平均年齢約58歳の日本人女性を対象とした研究でケルセチンの摂取量が多いと血中総コレステロール及びLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が低下する傾向が示されています。また、ケルセチンには血糖値上昇を抑制するはたらきがあるという報告もあり、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病予防に役立つ可能性があると考えられています。
ケルセチンの効果 まとめ
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- 血流を改善する効果
- 動脈硬化を予防する効果
- コレステロール値を下げる効果
ニンニクと玉ねぎは動脈硬化や認知症を予防する?
玉ねぎとニンニクには血液をサラサラにして血流を改善することにより動脈硬化予防につながる成分が含まれていることがわかりました。
タフツ大学のカーミア・ボレク教授は2006年、ニンニクは認知症と心臓病のリスクを軽減するという論文を発表しました。それによると、熟成ニンニクエキスはアルツハイマー病を含む心血管、脳血管疾患および認知症の危険因子を軽減することが示唆されています。
高コレステロール、高血圧及び炎症などの心血管疾患の危険因子はアルツハイマー病を含む認知症のリスクを高めます。血管の酸化的損傷は心血管疾患や認知症の主な要因であり、そのリスクは年齢とともに増加します。抗酸化物質が豊富な熟成ニンニクエキスはこれらの疾患のリスクを軽減するのに役立つ可能性があります。
おわりに
ニンニクと玉ねぎには体に有効な成分である硫化アリルが含まれていて、動脈硬化を予防することがわかりました。また、これらの食材は認知症の改善にも効果が期待されています。バランスの良い食事をとることが最も重要ですが、日々の食事にニンニクや玉ねぎの料理を積極的に取り入れて健康づくりに役立てたいですね。
参考文献
- Corzo-Martínez M. et al. Biological properties of onions and garlic. Trends Food Sci Technol. 18: 609-625 (2007)
- K. P. Sampath Kumar, et al: Allium cepa: A traditional medicinal herb and its health benefits. Journal of Chemical and Pharmaceutical Research,2010, 2(1),283-291(2010)
- Arai Y. et al Dietary Intakes of Flavonols, Flavones and Isoflavones by Japanese Women and the Inverse Correlation between Quercetin Intake and Plasma LDL Cholesterol Concentration. J Nutr. 130: 2243–2250 (2000)
- 恵泉 野菜の文化史( 10 ) 玉ねぎ 藤田智(人間社会学部人間環境学科) 藤田智 – 恵泉女学園大学園芸文化研究所報告: 園芸文化, 2014 – keisen.repo.nii.ac.jp
- Borek C. Garlic Reduces Dementia and heart-disease Risk. J. Nutr. 136: 810S–812S (2006)