テアニン・茶カテキンで、早めの認知機能低下対策

2021年04月08日

緑茶と認知機能の関係

日本では緑茶を飲む習慣がありますが、緑茶をよく飲む人は認知症発症のリスクが低いことが研究によって報告されています。最近では、緑茶の持つ認知機能に関する、さまざまな効果が解明されていますので、その秘められた力を紹介していきます。

認知機能とは…

よく耳にする「認知機能」とは、理解、判断、論理などの知的機能のことを指します。
意識はしていませんが、私たちの日常生活の行動は、知的機能が働いて実行されています。

知的機能は、「記憶力・注意力・判断力・言語力・理解力・思考力・計算力」などがあり、これらを総称した「認知機能」が働くことで、私たちは情報を正しく記憶する、理解する、決定する、学習する、計算することができています。

年齢とともに認知機能が低下すると、以前は問題なくできていたことが、手間取ったり、難しくなったりします。「認知機能」の衰えは加齢が一番の原因ですが、その兆候に早く気付き、対応をすることで、「認知機能」の低下を抑制できることがわかっています。

緑茶に含まれるカテキンとテアニンの力

お茶の成分のうち、渋みに関与しているカテキンと、旨みに関与するテアニンには、認知機能に及ぼす影響がありそうだと着目され、研究が進められています。
カテキンは強い抗酸化作用があり、活性酸素を抑制するため、アンチエイジング効果がありますが、脳の萎縮を抑制する働きや認知機能の低下を抑制する報告もあります。
テアニンは主にリラックス効果があり、ストレスを緩和しますが、これに加えて集中力、記憶力、学習能力を高める効果や、認知機能の低下を抑制する働きも報告されています。

カテキンとテアニンについて、近年ではどんなことが分かってきているのでしょうか。

カテキンがアミロイドβ凝集を抑制、認知機能を改善する可能性

アルツハイマー型認知症は、原因物質であるアミロイドβの凝集や蓄積によって発症すると考えられています。カテキンの中でも抗酸化作用の強いエピガロカテキンガレート（EGCG）がアミロイドβの凝集を抑制し、認知機能が改善することが動物実験で明らかになっています（文献1）。また最近、中高年を対象にしたカテキン抽出物の摂取試験で、認知機能の一部である「作業記憶」が改善することが報告されました（文献2）。

テアニンが脳神経細胞死を抑制し、脳梗塞による神経細胞死を抑制する可能性

グルタミン酸によって引き起こされる神経細胞死を、テアニンが抑制することが分かりました（文献3）。また、一過性の脳虚血（脳梗塞）による神経細胞死を抑えることも、動物実験で確認されています（文献4）。

抹茶はカテキンとテアニンを茶葉ごと摂取

茶葉を粉砕してつくる抹茶は、カテキンとテアニンを茶葉ごと摂取できることから、大変注目を集めています。抹茶でも認知機能に関する報告があります。

抹茶の継続摂取で中高年の実行機能や注意機能が改善

物忘れが気になる健常中高年において、抹茶の継続的摂取により、物事を迅速に判断して実行する実行機能や、注意機能の改善が確認されています（文献5）。

認知機能に関連するカテキンとテアニンの研究は、現在も継続して行われています。
今はまだ明らかにされていない力を秘めている可能性もあり、研究の報告が待たれます。

認知機能の低下には、早めに対応を

認知機能の低下が緩やかに進行します。その兆候に早めに気付き、認知症へと進行しないように予防することが大切です。

認知機能の低下による症状のうち、自他ともに分かりやすいものが物忘れですが、物忘れが顕著になる前に出てくるサインがあります。それが注意力の低下です。例えば、周囲のさまざまなことに注意を向けられなくなったり、「ながら行動」ができなくなる、面倒くさがるといったことがそのサインです。しかしこれらのサインは、自分では認知機能の低下であると気付きにくいものです。ご自身で心当たりがあったり、周囲の方が変化に気付いたら、対策を始める時期かもしれません。

年齢とともに低下する認知機能（注意力・判断力）が気になる方へ向けた抹茶製品が販売されています。
「お～いお茶 お抹茶」https://www.itoen.jp/oiocha/omatcha/

抹茶は茶道を連想し、敷居の高いイメージから手に取る機会は意外と少ないのではないでしょうか。実は抹茶は様々な食材と相性が良いのです。料理やスイーツにひとふりするだけで、いつもよりも贅沢な一品になります。抹茶のレシピが多数紹介されていますので、是非お試しください。
＜抹茶レシピ＞
https://www.itoen.jp/recipe/result.php?category=002002001
https://www.itoen.jp/recipe/result.php?category=018

参考文献：

1. M. Pervin et al. Beneficial Effects of Green Tea Catechins on Neurodegenerative Diseases. Molecules. 2018 23(6):1297.
2. Y Baba et al. Effect of Daily Intake of Green Tea Catechins on Cognitive Function in Middle-Aged and Older Subjects: A Randomized, Placebo-Controlled Study. Molecules 2020, 25(18), 4265.
3. T. Kakuda Neuroprotective Effects of the Green Tea Components Theanine and Catechins. Biol. Pharm. Bull. 2002 25(12) 1513—1518
4. T. Kakuda et al. Protective effect of γ-glutamylethylamide (theanine) on ischemic delayed neuronal death in gerbils. Neurosci Lett. 2000 289(3) 189-92
5. 馬場吉武ら. 中高年者を対象とした抹茶継続摂取における認知機能改善効果の検討―プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験―. 薬理と治療 2019 47(10) 1589-1702