検査できる病院を探す

認知症予防コラム

認知症予防習慣 ―適度な飲酒と禁煙習慣―

2021年02月26日

Prostooleh – jp.freepik.com

疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言

2021年2月19日、国立高度専門医療研究センター6機関の連携により「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」が発表されました。

健康寿命を延ばすことを目的として、小児、妊婦、成人、高齢者など、年齢や状態に応じたさまざまな疾患を縦断的に予防するためのガイドラインです。年代によって様々ある疾患の再発・重症化を予防するためには、疾患を個別に予防するのではなく、さまざまな疾患を縦断的にいかに予防するかが重要になるとのことです。

近年の日本における平均寿命は、男性が78.07歳(2001年)から80.98歳(2016年)へ、女性は84.93歳(2001年)から87.14歳(2016年)へ、健康寿命は男性が69.40歳(2001年)から72.14歳(2016年)へ、女性は72.65歳(2001年)から74.79歳(2016年)へと平均寿命も健康寿命も延びています。しかし、平均寿命と健康寿命の差である、日常の制限のある「不健康な期間」は、男性で8~9年、女性で12~13年と横ばいで推移したまま、大きな改善はありません。

2019年の国民生活基礎調査によると、要介護が必要になった要因のうち一番多いのが「認知症」です。次いで「脳血管疾患(脳卒中)」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」です。 「不健康な期間」を短くし、健康でいられる期間を延ばすことが、多くの人が求めている明るい未来です。今回発表された提言は、さまざまな疾患を予防するための10項目が示されていますが、このうち最初が「喫煙」続いて「飲酒」について言及されています。

健康を左右する生活習慣

現時点で確認されている国内外の疫学的エビデンスに基づいて、健康を左右する生物学的要因と生活習慣についてまとめられていますが、ここでは「喫煙」と「飲酒」を取り上げます。

『喫煙』

 ・たばこは吸わない。  ・他人のたばこの煙を避ける。
  【国民一人一人の目標】
  たばこを吸っている人は禁煙する。また、他人のたばこの煙を避ける。

『飲酒』

  ・節酒する。飲むなら節度のある飲酒を心がける。
  ・飲まない人や飲めない人にお酒を強要しない。
  【国民一人一人の目標】
   飲む場合は、1日あたりの飲酒量は、男性でアルコール量に換算して約23g程度(日本酒なら1合程度)、女性はその半分に抑える。休肝日を作る。寝酒は避ける。飲まない人や飲めない人にお酒を強要しない。

WHOでも推奨している「禁煙」「アルコール」

『禁煙』

禁煙介入は認知機能低下と認知症リスクを低減する可能性があるため、喫煙している成人に対して行われるべきだと、強く推奨されています。

<研究報告でわかっていること>
・喫煙の実質的な害と、喫煙による認知症リスクの増加
・中年期の喫煙は認知症発症のリスクが高い
・喫煙が脳を損傷し、認知機能低下に関与する

『アルコール』

危険で有害な飲酒の減量や中断は、認知機能正常やMCIの成人に対して認知機能低下や認知症のリスクを低減するため、条件付きで推奨されています。

<研究報告でわかっていること>
・飲酒量と認知症や認知障害とはU字型の関係である
・過度のアルコール摂取はリスクの増加に関連している

Prostooleh – jp.freepik.com

今のままで大丈夫ですか?

健康寿命延伸と、要介護の一番多い要因である認知症を予防のためには、禁煙と節酒が効果的であると推奨されている。これは昔から言われていることで、何度も聞いているため頭では分かってはいるけれど…、なかなか実現が難しい課題です。

喫煙と飲酒は、それによって得られる効果があり、加えてどちらも依存性があることが、禁煙や節酒が難しい一因だと推測できます。この記事を読んだ機会に、一度立ち止まってみませんか。禁煙・節酒をせず今のままで10年が経過した場合、禁煙・節酒をした場合と比較すると、身体や脳の状態はどれだけ違っているでしょうか。10年の差は歴然としていることでしょう。10年先の姿が禁煙と節酒のきっかけになるかもしれません。

禁煙と節酒が認知症予防、疾患予防につながるので、自分のためだけでなく、家族や周囲の人にとっても好ましい結果になるはずです。健康で過ごせる期間を延ばすために、適度な飲酒と禁煙習慣は早く始めるに越したことはありません。明るい未来のために、適度な飲酒と禁煙習慣は近道かもしれません。

参考文献: