抹茶の効能 ~生活習慣病や認知機能が気になる方へ~
2020年11月12日
日本の抹茶は「Matcha」の名称で海外でも注目を集め、その優れた健康効果や美容効果から「スーパーフード」と呼ばれてブームになりました。アメリカのコーヒーショップでは既に定番メニューとなり、ヨーロッパでも抹茶を専門に扱うカフェなどが増えているほど、多くの人の間で知られています。抹茶には優れた効果がたくさんありますが、認知機能に関する効果も認められていることをご存知でしょうか。40代以上に嬉しい抹茶の効能を中心にご紹介します。
目次
- 抹茶と緑茶の違い
- 抹茶の主成分
- テアニンの効果
- ◎リラックス効果
- ◎集中力、記憶力、学習能力を高める効果
- ◎認知機能の低下を抑制する効果
- ◎動脈硬化予防、高血圧を予防する効果
- ◎睡眠の質を高める効果
- テアニンの含有量の違い
- カテキンの効果
- ◎抗酸化作用、活性酸素の抑制、アンチエイジング効果
- ◎脳の萎縮や脳機能の低下を抑制する効果
- ◎体脂肪を減らす効果、肥満を抑制する効果
- ◎血中コレステロールを抑制する効果
- ◎血糖値の上昇を抑える効果
- カテキンの含有量の違い
- カフェイン・サポニンの効果
- ◎認知機能低下の抑制効果
- ◎注意力と処理能力の向上効果
- ◎血栓の原因を抑制、コレステロールの除去、免疫力向上の効果
- いろいろなレシピで抹茶を楽しんでみませんか
- 参考文献:
抹茶と緑茶の違い
抹茶は碾茶(てんちゃ)の茶葉を茶臼で挽いて粉末にしたものです。
緑茶は急須に茶葉を入れてお湯を注いだ抽出液をいただきますが、抹茶は粉末にした茶葉ごといただくため、茶葉に含まれる栄養素を全て体内に取り込むことができます。
抹茶の主成分
抹茶の主成分は、カフェイン・タンニン・ビタミン・ミネラル・テアニン(アミノ酸)・タンパク質・セルロース・サポニン・カテキン(ポリフェノール)があげられます。多くの成分によって非常に幅広い効能があるのですが、ここでは生活習慣病や認知機能が気になる方のための効能にスポットを当ててご紹介します。
テアニンの効果
テアニンは1950年に日本人が発見した成分です。アミノ酸の一種で、お茶のうま味・甘味に関与している他、次のような効果があります。
- リラックス効果
- 集中力、記憶力、学習能力を高める効果
- 認知機能の低下を抑制する効果
- 動脈硬化予防、高血圧を予防する効果
- 睡眠の質を高める効果
◎リラックス効果
お茶を飲んだ時の安らいだ感覚はテアニンの癒し効果によるもので、気持ちを鎮めて緊張を和らげるリラクゼーション効果があります。テアニンを摂取すると40~50分でα波(ゆったりと気分が落ち着いたときに現れる脳波)が増加しました。抹茶に含まれるカフェインによって強い興奮作用が起こらないのは、テアニンの鎮静作用の効果によるものです。
◎集中力、記憶力、学習能力を高める効果
認知機能の低下が気になり出す年代には嬉しい、記憶力や学習能力が高まるという効果があります。これは、テアニンが脳に届き、神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンの濃度を変化させるためだと推測されています。
◎認知機能の低下を抑制する効果
実験段階の情報では、神経幹細胞をテアニンとともに培養すると神経細胞が増殖しやすいことがわかりました。記憶を司る海馬に多い神経幹細胞が増えるとは、今後の研究報告が待たれます。
◎動脈硬化予防、高血圧を予防する効果
テアニンは、過剰なグルタミン酸の働きを抑え、虚血による脳神経細胞の障害を軽減し、神経細胞を保護します。これによって、高血圧の予防と改善を期待できます。
◎睡眠の質を高める効果
テアニンを就寝前に摂取すると、脳の抑制系神経を活性化して興奮系神経が鎮まり、寝つきが良くなります。中途覚醒がなく熟睡できることで睡眠の質が高まります。
ストレスの抑制、生活習慣病の予防、質の良い睡眠は全て認知症の予防につながります。直接的に認知機能の低下を抑制したり、神経細胞が増えたりすることを含めて、抹茶が認知機能に関与していることがわかります。
テアニンの含有量の違い
うま味と甘みを引き出すテアニンは根の部分で作られ、茎を通って葉に移動します。しかし、その葉が日光を浴びることにより、テアニンは渋み成分であるカテキンに変化してしまいます。したがって、お茶の種類や採取時期によってテアニンの含有量が異なります。日光を遮りながら日陰で育てられる玉露や碾茶(抹茶)は、茶葉にテアニンを豊富に含んだまま処理工程に移るため成分はそのまま茶葉に残ります。テアニンはうま味のしっかりした高級なお茶に多く含まれているといえます。
カテキンの効果
カテキンは1821年にドイツ人により発見されました。ポリフェノールの一種で、渋味や苦味のもととなる成分です。次のような効果が認められています。
- 抗酸化作用、活性酸素の抑制、アンチエイジング効果
- 脳の萎縮や脳機能の低下を抑制する効果
- 体脂肪を減らす効果、肥満を抑制する効果
- 血中コレステロールを抑制する効果
- 血糖値の上昇を抑える効果
◎抗酸化作用、活性酸素の抑制、アンチエイジング効果
茶カテキンは強い抗酸化作用を持ちますが、4つの茶カテキンのうち、含有量の多いエピガロカテキンガレート(EGCG)は特に強力です。これによって、活性酸素(がんや動脈硬化、アルツハイマーなどを引き起こす因子で、老化につながる物質)の増加を抑える効果があり、細胞の損傷を修復して慢性疾患を防ぐ効果があります。
◎脳の萎縮や脳機能の低下を抑制する効果
抗酸化作用によって、脳の萎縮や脳機能の低下の抑制、更には肌のシミ、しわ、たるみの予防も期待できます。
◎体脂肪を減らす効果、肥満を抑制する効果
新陳代謝が良くなり脂肪が燃焼されやすくなる効果によって、体脂肪を減少させます。肥満や脂質異常症に対する効果が明らかになっています。
◎血中コレステロールを抑制する効果
肝臓でつくられる胆汁酸の排泄を促進することで、血中コレステロールの増加を防ぐ効果もあります。
◎血糖値の上昇を抑える効果
唾液や膵液に含まれる消化酵素の働きを抑えて、時間をかけて消化を行うことにより血糖値の上昇を抑えます。
血液中の中性脂肪値やコレステロール値が高くなると、高血圧や糖尿病をはじめとする生活習慣病につながります。“認知症は生活習慣病の成れの果て”とも言われますので、生活習慣病の予防効果を期待できるカテキンの抗酸化作用は、認知症予防につながってきます。
カテキンの含有量の違い
根で作られるテアニンが茎を通って葉に移動し、その葉が日光に当たることでテアニンが分解されて、カテキンに変化します。カテキンは、日光を多く浴びた分だけ茶葉に多く含まれますので、芽先よりも開いた葉、覆いをして栽培する玉露やかぶせ茶よりも煎茶、春先の一番茶よりも日照時間の多い夏に摘まれる二番茶や三番茶の方が多く含まれます。
また、製造過程で茶葉を酸化発酵させない緑茶は、ウーロン茶や紅茶に比べて含有量が多く、カテキンのまま茶葉に残ります。
カフェイン・サポニンの効果
- 認知機能低下の抑制効果
- 注意力と処理能力の向上効果
- 血栓の原因を抑制、コレステロールの除去、免疫力向上の効果
◎認知機能低下の抑制効果
抹茶に含まれるカフェインは緑茶の3倍とされ、このカフェインが大脳の働きを活性化します。
◎注意力と処理能力の向上効果
カフェインとテアニンの作用によって、摂取から1時間で集中力と処理能力が向上することが報告されています。
◎血栓の原因を抑制、コレステロールの除去、免疫力向上の効果
抹茶を泡立たせている成分はサポニンといいます。抗菌・抗ウイルス作用のある成分なのですが、このサポニンは、血栓の原因となる過酸化脂質を抑制したり、コレステロールの除去や、免疫力を高めたりする効果もあります。
いろいろなレシピで抹茶を楽しんでみませんか
生活習慣病と認知症の予防に絞っても、抹茶の効能は幅広く、これだけ多くの項目を挙げられます。抹茶というと飲み物を思い浮かべますが、実は食べ物で口にすることも多くあります。和菓子、ケーキやチョコレートなどの洋菓子、天ぷらの抹茶塩もそうですが、その美しい色を活かしてドレッシングやソースの着色料としても幅広く利用されています。
手軽に摂るには、ホットやアイスのラテが簡単に作ることができて、飲みやすいでしょう。ドリンクだけでなく、スイーツやお料理のレシピも多く公開されていますので、レパートリーを増やす楽しみもできます。
中年期の気になる症状を改善するために、抹茶を取り入れてみませんか。
参考文献:
・片岡洋祐ら テアニン高含有緑茶抹摂取による高齢者の認知予防効果 日本未病システム学会誌15 (2009)
・Kazuki Ide et al, Green Tea Consumption Affects Cognitive Dysfunction in the Elderly: A Pilot Study. Nutrients. (2014)
・Gail N Owen, Holly Parnell, Eveline A De Bruin, Jane A Rycroft. The combined effects of L-theanine and caffeine on cognitive performance and mood. Nutr Neurosci. 11:193-8 (2008)