コロナ初期症状?MCIの嗅覚障害
2020年06月20日
新型コロナウイルスの感染が世界中に流行している中、体の変調にいち早く気付くために日々感覚を研ぎ澄ませていることと思います。感染初期には発熱や体のだるさ、咳やたんなど風邪のような呼吸器症状がみられますが、目立った症状はなくても、匂いや味が分からなくなることがコロナ初期症状として注目されています。
感染の可能性が疑われる場合には、お住まいの保健所の指示に従って相談してください。匂いや味が分からないという嗅覚・味覚障害は、コロナ初期症状以外にも重要な手掛かりになる場合がありますので、思い当たる原因が他にないかどうか確認することが大切です。
目次
匂いが分からなくなる3つの嗅覚障害
匂いを感じる仕組みは、鼻孔(鼻の穴)から入った匂い物質を含む空気が鼻腔(鼻の内腔)の天井部分にある嗅粘膜にたどりついて嗅神経を刺激します。その刺激が大脳へと伝えられてどんな匂いなのかを認識します。
このルートのどこかがダメージを受けることで嗅覚障害が起きますが、ダメージの場所によって障害のタイプが異なり、大きくは「呼吸性」「抹消性」「中枢性」の3つに分類されます。
1.呼吸性嗅覚障害
鼻関連の病気により、匂い物質を含む空気が嗅粘膜に届かないため匂いが感じられない。
【風邪、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など】
2.抹消性嗅覚障害
嗅粘膜の嗅細胞が破壊されたり傷つくことで生じます。嗅神経が頭部外傷によって働きが悪くなることで生じる。
【感冒などのウイルス、慢性の副鼻腔炎、有毒ガスの吸入、加齢、頭部外傷など】
3.中枢性嗅覚障害
脳の障害により、匂いに関する情報を処理できず、匂いの判別ができなくなる状態。
【頭部外傷、脳腫瘍、アルツハイマー病、パーキンソン病など】
MCIや認知症の初期症状の可能性?
ここで注目したいのは、脳の障害による嗅覚障害です。
MCIや認知症のごく初期の段階では匂いを感じにくくなる症状があります。この症状に早い段階で気が付けば、MCIや認知症の進行を遅らせることができます。
嗅覚障害でMCIリスク2倍、アルツハイマー型認知症への進行は3~5倍
アメリカの大規模研究で、嗅覚障害がMCIやアルツハイマー型認知症の進行と関連していることが報告されています。嗅覚の低下とMCIリスクの上昇には関連があり、一方で嗅覚試験のスコアが高いほど認知症の発症頻度が低く認知機能が高かったとしています。
嗅覚は鍛えられる
カレーやミントの匂いは分かりますか?
嗅覚の衰えは意外と気づきにくいものです。誰もが認識しやすいカレーやミントを嗅ぐことで、嗅覚の低下を確認することができます。
嗅覚の低下を感じた場合には、嗅覚を鍛えることで機能が改善します。その方法は、まず身の回りの匂いを意識することから始まります。「コーヒーの良い香りだな」「これはミカンかな?」と匂いを気にしてみることです。その上で「今日のお味噌汁はいつもと違う出汁かな?」「このリンゴは甘みが強い香りだな」など、匂いを積極的に分析するように嗅ぐことで、嗅神経細胞の数が増え、脳内回路ネットワークが強まると言われています。嗅神経は再生能力が高いため、効果的に刺激し、その刺激が脳に伝わることで脳機能を活性化させます。
嗅覚は生活の質(QOL)に大きくかかわってきます。味が分からないと美味しく食べられませんし、花や雨など自然の匂いが分からないとリラックス効果を享受できません。ガス漏れに気が付かないといった危険な一面もあります。
アロマオイルを調合する香りのプロは、同じラベンダーの香りでも産地や収穫時期によって異なる微妙な香りの違いを嗅ぎ分けられるよう、トレーニングをするそうです。
匂いを意識的に感じ、嗅覚のトレーニングをしてみませんか。豊かな生活につながり、認知症予防効果も期待できますよ。